全世界ネコミミメイド化計画

コミックマーケット74参加のため、
記事の配信が送れてしまいました。
楽しみにして下さっていた皆様、申し訳ありません。
私もいつかはサークル参加を目指して誠心誠意頑張っておりますので、
今後共よろしくお願いします。
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「じゃあ17時に東京駅で集合ね」
朝、ホテルのフロントでチェックアウトを済ませた後、渡辺さんがそう言った。
展示会でせっかく東京まできたんだから今日は遊んで帰ろうという事になった。
平日のはずなのに仕事もしないで、だ。
会社が出張費を出しているのに、だ。
とんでもない会社だ!
だからと言って俺一人帰る程ばかでもない。
「こんな緩いところが家の会社の良いところだよ?給料安いんだから」
大道寺さんはそう言っていた。
でも逆に考えるとだ、そんな輩が多いから利益も減って給料も少ないのでは…?
なんてふと思ってしまったが口にはできなかった。

「じゃあ連絡用に携帯電話の番号を教えて」
渡辺さんが俺に言った。
「そう言えば沢村さんの番号は僕も知らないかも」
そう言えば大道寺さんの番号も未だに知らなかった。
だから番号の交換をすることにした。
「メールアドレスも知りたい?」
「じゃあせっかくなんで教えてください」
「全世界ネコミミメイド化計画!@docomo.co.jp」
俺は一瞬言葉を失った。
「………今なんて言いました??」
「全世界ネコミミメイド化計画!!@docomo.co.jp」
大道寺さんは少し声のボリュームを大きくして言った。
おかげで少しばかり周囲の視線を集めてしまったじゃないか!
「覚え安いでしょ?ちょうど30文字制限ぴったりなんだよ。
前は迷惑メールが多くて困ってたんだけどね。これに変えたら全く来なくなったよ」
と大道寺さんは鉾らしげに言った。
なるほど、確かにぴったり30文字だ。
そして確かに覚え安い。こんな強烈な標語はそう簡単に頭から離れそうにない。

しかし突然遊んできていいと言われても、俺には全く当てがなかった。
だから大道寺さんと一緒に行動することにしてしまった。
その選択が間違いだったに違いない!
そりゃ東京でオタクが行くところと言えば決まっている。
大道寺さんが聖地と称する場所、秋葉原だ。
秋葉原にも通い慣れているのか電車の乗換まで完全に把握しているようだった。
一体どれだけ秋葉原に通っているんだ!?
新幹線に乗っても数時間はかかる距離に住んでいるのに。
ここで一体何をするのか、って言うかどんなところなのか、俺にはわからなかった。
考えてみればオタクの街でメイド喫茶というものがあるらしい、
と言うテレビで得た知識以外何も知らなかったのだから。
「買いたいものがあるんだよ」
と大道寺さんが最初に入った店は、俺が想像していたのとはちょっと違った。
秋月電子通商、電子パーツを売っている店だ。
俺はこの手の店に入るのさえ初めてだったから新鮮だった。
「何を買うんですか?」
「何って言うか…面白そうなのを」
大道寺さんは嬉しそうに棚をごそごそとあさり始めた。
でも俺には置いてあるものの大部分が何に使うものなのか理解できなかった。
これが仕事だというのに情けない。
「そう言えば、みんなのお土産何が良いと思う?僕はこれなんか面白いと思うんだけど?」
そう言って何かのICを俺に見せた。
「何ですか、これ?」
「何ってマイコンだよ?わからないの??」
そう言った大道寺さんの言葉は少しばかり俺の胸に刺さった。
「これだと1個100円だし、どうかな?」
「でもそんなのもらってどうするんですか??」
「えっ!?どうって…そんなのもらった人次第でしょ?マイコンなんだし…」
そう言われても、俺にはマイコンの有難味が理解できなかった。
と言うよりもこんなものをもらって嬉しいのか??
「でも事務のお姉さんたちはもらっても喜ばないんじゃないですか?」
「そっか…それもそうだね。じゃあお姉さんたちには食べ物にしよっか」

そう言ったはずの大道寺さんが向かった店はアニメイトだった。
その名前からわかるように、大道寺さんがとっても好きそうな店だ。
「あの…食物買うんじゃないんですか??」
「買うよ、ほらここにあるでしょ?」
と大道寺さんが指指したのは確かに食物だった。
「マジですか!?こんなのがあるんですか!!って言うか、
こんなの買っていったらお姉さんたちドン引きですよ!?」
って言うか、あなた正気ですか!?
「いいじゃない、秋葉原らしくって」
「でもこれは…。そもそも俺たち秋葉原に出張に来たわけじゃないんですよ!!」
「いいんだよ、これで!文句言う奴には食べさせなければ!!」
大道寺さんは数箱手に取ってレジに持って行った。
二次元美少女のイラストがぎっしりとかかれた箱に入ったお菓子だ。
こんなものが売っているとは…さすが秋葉原だ…。
そして本当にこんなものを事務のお姉様方に配って回るつもりなのか!?

その後、俺は大道寺さんに怒られた。
「沢村くん、社会人なんだからTPOってものをわきまえた服装をした方が良いんじゃない?」
その言葉だけ聞くともっともらしい。
「その服装は秋葉原にそぐわないよ?」
適当なシャツとジーンズとリュック、つまり大道寺さんの普段着のような服装をしろと、
そう言われていたわけなんだ。
「でも今回は出張で来たわけですから…」
俺はもちろん仕事をするのに相応しい服装をしていたわけだ。当然だろう?
「仕事ばっかりじゃダメだよ?遊ぶときは遊んでリフレッシュしないと。
遊べない人は仕事もできない人だよ?」
なんて言っていた。
そんなことをさ、メイドさんからドリンクに文字を書いてもらって
喜んでるような人に言われてもさ、説得力ないじゃん!
「何事も経験だよ?」
そう言われて行列までして入ったメイド喫茶での会話だ。

「大道寺さん、鞄が尋常でないくらいまで膨らんでますけど、何を買ったんですか??」
大道寺さんは満面の笑みを浮かべて答えた。
「フフフ…、これにはね、無限の夢と希望が詰まってるんだよ」
そうですか、超オタグッズ買い込んだんですね、いつの間にか…。もちろん自腹ですよね??

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

展示会はコンパニオンの撮影会じゃねぇんだよぉぉぉ!

「こんなに空いてるビッグサイトを見るのは初めてだよ!」
国際展示場駅を出て大道寺さんが発した第一声がそれだった。
「いつもは混んでるんですか??」
「いつもっていうか、僕が知ってるのはコミケの混雑だけだけどね」
「そんなに混むんですか?」
「駅から出るのも一苦労だったような気がするんだけど…」
「えっ!?マジですか!!そんなにですか?」
「そうなんだよね〜…始発に乗ったはずなのに既に激しい行列だしね〜…」
「それは…みんなオタクの群ですか?」
「そうだよ〜。この広大なビッグサイトの大部分を借り切るのってコミケくらいのものだよ?」

そんな事を嬉しそうに語っている大道寺さんの首からは大きなカメラが下げられていた。
「カメラ持ってきたんですか?」
「そうだよ。だって出張報告しないといけないでしょ?
来れなかった人達にも雰囲気を味わわせてあげないといけないからね」
「でもカメラなら渡辺さんが会社のデジカメを持ってきてますけど?」
「営業とエンジニアじゃ視点が違うから同じ展示会でも注目するものは違うと思うよ?」
「それにしても立派なカメラですね」
「去年買ったんだよ」
「デジタル一眼レフカメラですか?ずいぶんと大きなレンズが着いてますね」
「高かったんだよ、このレンズ」
「いくらしたんですか?」
「う〜ん…十数万円くらいだったかな?」
「ちょっと高すぎないですか?」
「でもカメラってレンズが重要だからね。
それにね、やっぱり大きなレンズだと注目してもらいやすいんだよ。
カメラ小僧に囲まれたレイヤーさんを撮るときも視線をもらいやすいしね。
どうせ撮られるならちゃちな携帯のカメラよりも他を圧倒する立派なカメラの方が良いでしょ?」
大道寺さんの話の中に理解できない新出単語が現れた。
と言うか、その状況がイメージできない。
「………それってどういう状況で写真撮ってるんですか??」
「どういうって…コスプレ会場で写真撮ってる時に決まってるでしょ??」
大道寺さんは、さも当然でしょ?といいたげな表情で、
なんでそんなことを聞くんだ?とでも思っているんだろうか、
不思議そうに答えてくれた。
そんなことのために何十万円も注ぎ込むとは俺には理解できない。
自分の子供は世界一可愛いとか思い込んで高いビデオカメラとかデジカメとか買ってる
親バカな連中の方がまだ理解できるよ。

とは言っても、さすがに高いカメラとレンズで撮った写真は
コンパクトカメラのそれとは歴然とした差があった。
そして確かに大道寺さんと渡辺さんでは写したものが全く違った。
これが『営業とエンジニアの視点の違い』というものなのか?
って言うか、『男と女の視点の違い』の間違いんじゃないのか!?
だって大道寺さんの写真にはコンパニオンのお姉さんが半分くらい写ってたんだから。
でもそんな写真でも会社のおじさんたちにはずいぶんと評判が良かった…。
そう言えば、
「一枚お願いします」
なんて言いながら大道寺さんは手当たり次第にきれいなお姉さんに声をかけていた気がする。
一枚では済んでいたと思えないほどシャッターの音が響いていたが…。
調子に乗ってポーズにまで注文をつけていたように見えたのは俺の気のせいか?
何人かに断られたって屈せずに写真を撮りつづけていたっけかな…。
たくましいオタクだよ。
眩しいばかりのフラッシュまで焚いてさ。
俺はうんと離れて他人のふりをしたかったよ。
まぁそれでも残り半分の写真はしっかりとポイントを抑えた写真を撮っていた。
一応仕事の事は忘れていなかったらしい。

それにしても展示会は楽しい。
この製品すごいな〜とか、こんな面白い技術があるのか〜なんて
感心してるだけなんだから。
それだけで仕事になるんだから楽なものだ。
もっとも、興味のないテーマだったら退屈だったかもしれないけれど。
「面白いって思えるって事は、この仕事に向いてるって事だよ」
大道寺さんはそう言っていた。

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出張にDS持ってくるんじゃねぇ!バカヤロォ!!

展示会に行ってきた。
様々な企業が自社の最新技術や製品をアピールするための催しだ。
この手のイベントは大抵都会である。
俺たちが行った展示会は東京国際展示場であった。

こなたの開発も一段落して少しばかり時間に余裕ができた。
だから息抜きをかねて最近のトレンドを掴むという名目で展示会に行った。
展示する側として参加するならば大変かもしれないけれど、見るだけなら話は別だ。
ぶっちゃけた話、遊びに行ったと言っても過言ではない。
もちろん、会社の金でだ。
行ったのは俺と大道寺さん、それからほぼ引率係の渡辺さんの三人だ。
俺はまだ見習い中だから先輩の大道寺さんについて行くのは当然なのだろう。
だから本来は大道寺さんが引率係になって然るべきなのだ。
それなのにどうして引率係が必要なのかというとだ。
「だって僕電車嫌いだし、乗り方よくわからないんだよ」
なんて事を大道寺さんが言うものだから、
やむを得ず営業の渡辺さんが駆り出された。
とは言っても、東京に遊びにいけるのだから渡辺さんもまんざらではない様子だった。

「じゃあ明日は8時50分に駅の改札に集合ね。遅れたらダメだよ、大道寺くん?」
と渡辺さんは念を押していた。
しかし、それでも遅刻をしてくるのが大道寺さんだ。
ただ、いつもと違って大道寺さんは走ってきた。
息を切らせながら駅の階段を駆け登ってきたんだ。
それから「ごめんなさい」と謝った。
俺じゃなくって渡辺さんに…。
俺は少しばかり驚いた。いつも無敵すぎる大道寺さんが謝ったんだから。
「大道寺くん、遅刻したらダメだっていつも言ってるでしょ??」
そんな事課長も部長も言えないのに、渡辺さんは言った。
そして大道寺さんを謝らせた。実は渡辺さんってすごい人なのかもしれない。
「ひょっとして電車に乗り遅れちゃいましたか…??」
と大道寺さんが申し訳なさそうに言った。
「大丈夫、こんなこともあろうかと思って大道寺くんには集合時間を早めに言ったから」
つまり渡辺さんには大道寺さんが遅刻することは想定通りの事態だったということだ。
まぁあれだけしょっちゅう遅刻する人なんだから想定できない方にも問題がありそうだ。

それにしても大道寺さんが本当に電車の切符さえまともに買えないとは思いもしなかった。
まるで初めてのお使いに行かされた子供のようにおどおどとしていた。
家に引き篭ってばかりだからわからないんだよ!
まぁしかしこんなときのための引率係なのだろう。
渡辺さんが大道寺さんの切符までちゃんと買っていた。
「こっちだよ、大道寺くんちゃんと着いてきてる?」
なんて、指定席で買った新幹線の座席に座らせるまで
渡辺さんはしっかりと引率していた。

座席につくと大道寺さんは鞄の中から早速DSを取り出してゲームを始めた。
俺はその光景に驚いた!そして呆れた…。
だって出張なんだよ?一応仕事なんだよ??
確かに俺たちの仕事は新幹線の中じゃ何もできない。
目の前にパソコンとか基板とかオシロスコープとか半田鏝が揃っていないと仕事にならない。
でもだからっていきなりDSかよ!?まるで子供の遠足じゃないか!
いや、子供だって遠足にDSは持ってこないだろう?
「先生!大道寺くんがDS持ってきてます!!」
って感じだ。
しかし、引率係の渡辺さんは雑誌なんか広げて寛いでいて、
大道寺さんを指導するつもりなんてさらさらないようだった。
「お菓子は1000円以内だよ?」
することがないから俺は持ってきたお菓子を頬張っていた。
そんな俺に向かって大道寺さんが言ったんだ。
「えっ!?そんなの決まってるんですか??」
「そうだよ。就業規則の出張のところに書いてあったでしょ??」
「えっっ!?マジですか??」
そんなことまで規定されているのか!?と驚いてしまった。
まぁしかし大道寺さんが出世するくらいおかしな会社なんだから、
そんなことまで規定していたとしても不思議ではないような気がした。
けれど大道寺さんはしばしの沈黙の後に言った。
「馬鹿じゃん?そんなの嘘に決まってるでしょ?」
下らないこと言いやがって!!

「えっと…国際展示場はどうやっていくのかな?」
東京駅まで引率してきた渡辺さんも、東京にはそれほど詳しいわけではないようだった。
手帳を取り出して調べてきたページをぺらぺらと探していた。
そんな時に大道寺さんがぽつりと言った。
「山手線に乗って大崎でりんかい線に乗り換えたら行けますよ」
「えっ?大道寺さん知ってるんですか?」
新幹線にさえ一人で乗れなかった引き篭りが、
どうして東京の路線に詳しいのかと疑問に思うのは当然だろう?
「オタクの常識だよ?」
「オタクだとどうして知ってるんですか??」
「ビッグサイトはオタクの聖地だよ?年2回、巡礼しているからね」
東京国際展示場が一体いつからオタクの聖地になったのかは甚だ疑問だ。
が、しかし、大道寺さんは的確に答えてくれた。
「1996年の夏からだよ」
俺の疑問はそういうつもりではなかったのだが、
そうきっぱり言い切られると納得するほかない…。
「その時はどうやって東京まで来てるんですか?」
「車だよ?電車嫌いだし。でも東京に入ると慣れない都会の道を走るのも大変だしね。
仕方がないから電車で移動してるんだけどね」
「車って大道寺さんのあの車ですか!?」
車全体にアニメキャラクターの絵が描かれた超絶的に痛いエリーゼの事だ。
「そうだよ、何のための塗装だと思ってるの?聖地巡礼仕様だよ。みんな乗ってるんだよ」
みんな、と言う言葉がどれほどの規模の人を指しているのかはわからない。
とりあえず、大道寺さんみたいな人が少なからず集まってくるということだろう。
しかしそんな痛々しい車が集まったところなどさぞかし壮観であるに違いない。
きっと一般人には近寄る事もできない精神的結界というか、
ATフィールド的なものが展開されていることだろう。
「で、何があるんですか?その聖地で」
「君は本当にものを知らないんだね。コミケだよ、コ・ミ・ケ」
だってさ、知らないでしょ?普通はさ。コミックマーケットだなんてさ。
まぁでも大道寺さんのおかげで迷わず東京国際展示場、通称ビッグサイトに到着できた。
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社会人は制服少女に見とれて遅刻なんてしねぇんだよぉ!

今日も大道寺さんはいつもの様に遅刻をしてきた。
「おはようございま〜す」
と全く悪びれる様子もなく。
しかし今日はいつもにも増して、少しばかり遅かった。

「何かあったんですか?」
と俺は聞いてみた。
「制服が夏服に変わる季節だからね」
そんなわけのわからない答えが返ってきた。
「どういう意味ですか?制服ってどこの制服ですか?
夏服になるとどうして大道寺さんが遅刻するんですか?
そもそも大道寺さん、ビジネスカジュアルどころか、
思いっきりカジュアルで制服とは無縁な服装じゃないですか?」
その様は、まるでこれから秋葉原の町にでも繰り出すのかと思ってしまうくらいだ。
「青く澄んだ空、照りつける太陽!
下着が微かに透ける白いブラウス!!
露になった細くて白い腕!!素晴らしいじゃないか?」
俺は一瞬言葉を失った。
「それはつまり…?」
大道寺さんの発する言葉の先を聞くのが少し恐かった。
聞かなくても何を言おうとしているのかわからないわけでもなかった。
この人はきっととんでもないことを口にしようとしているに違いない!
「やっぱり制服少女はいいよね〜、とか思って見てたら道間違えちゃったんだよ」
大道寺さんは自転車通勤をしている。
『だって電車嫌いだもん。僕を待たせるなんてあり得ないでしょ??』
と言うのがその理由らしい。
「どうしていつも通っている道を間違えるんですか!?」
「いやね、本当は今日こそ遅刻しないでおこうと思っていつもよりも早く家をでたんだよ?
そしたら制服少女たちがいっぱい登校してる時間と重なっちゃってね。
それでいつもは見かけない可愛い子がいたからね〜…つい…」
「…それが…遅刻の理由ですか??」
そんな理由で会社に遅れてくるなんてとんでもない奴だ。
社会人としての自覚はあるのか!?
と言うか、大人としての自覚はあるのか??

「ううん、違うよ」
「え??じゃあ何で遅刻したんですか!?」
「一応ね、ぎりぎりに駐輪所に到着したんだよ。
そこから走ったら間に合ったんだけどね、ちょっとアクシデントがあったんだよ」
「アクシデント??何ですか、それは?」
「自転車を端から全部倒しちゃった女の子がいたんだよ。
それが結構な台数でね、可哀想だな〜って事で助けてあげたんだよ?」
「それで遅刻したんですか?」
「そうだよ〜。困ってる女の子は助けてあげないといけないでしょ?
こんなに可愛いドジっ娘は滅多にいないよ?
ドジっ娘は人類の宝だからね、保護してあげないと。
遅刻がどうとかって些細な事気にしてちゃダメなんだよ!
そんなことよりも大切な事があるんだから。
心にゆとりを持たないといけないんだよ。
遅刻くらいでがたがた騒ぐようじゃ出世しないよ?」
大道寺さんはそんな言い訳をした。
とりあえず、反省はしていないらしい。
きっとまた明日も遅刻なんだろう。

「それにしてもリリアンの制服って可愛いよね?」
「リリアン??何ですか、それ?」
「何って、この辺にある学校でしょ?毎朝登校中の学生を見かけるけど??」
リリアン…とりあえず俺は会社の近くにある学校を全て思い浮かべてみた。
けれど、何をどう考えてもそれらしい名前の学校は思い当たらない…。
「さっき話してた、大道寺さんを惑わせて道を間違えさせた制服の子がいる学校ですか?」
「そう、そこ」
「そこは女子高でもなければカトリック系の学校でもないですよ??
普通の共学の公立高校ですよ?野郎もいっぱいいたんじゃないですか?」
「あれ??そうだったかな??気がつかなかったな…」
つまりは、男子の存在が目に入らないほど少女たちに熱い視線を送りつづけていた危ない人だ、
という理解で間違いないのだろう。
「でも夏はニーソな娘が減っちゃうから残念だよね〜」
「大道寺さん…危ない話はそれくらいにしてそろそろ仕事しませんか?
ただでさえ遅刻してるんですから…」
俺がそう嗜めたら大道寺さんはあからさまに不機嫌そうな顔をした。
「…絶対領域!!」
突然そんなことを叫ぶことにどんな意図があったのか俺にはわからない…。
ひょっとしたら大道寺さん流の気合いを入れるかけ声だったのかもしれないが。
きっとこの人もこの夏の暑さで理性が焦げ付いたんだろう。

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こなたはやっぱり人気者でした

大道寺さんが爆弾騒ぎ未遂を犯したあの日。
なぜ俺たちは電車に乗ってお客さんのところへと行ったかというと、
それは俺たちが開発したこなたをお客さんに売り込むためだ。
と言っても、購入はほぼ確実。
結果次第で多少売れる台数が変動するくらいだ。
もっとも、売り込みは営業さんに任せておけばいいことだ。
お客さんの反応を見て改良点を探る以外に役目は無い。
だから俺たちは遠足気分だった。
大道寺さんははしゃしすぎて不要なおもちゃを持ち込んだくらいなのだから。

肝心のこなたの反応はというと、とりあえず注目を集めることはできたようだ。
大道寺さんが無駄に派手なインターフェイスをごてごてと実装した甲斐あって、
とにかく目立ったからだ。
橋本課長がこなたを取り出して組み立て終わり、
デモを始める頃になるとお客さんが周囲を取り囲んでいた。
後ろから背伸びをしてまで見ようとする程だ。
部屋中にいたお客さんが残らず集まっていたんだろう。
本当は数人の担当者に見せるだけのはずだったのに。
きっとこなたにはお客さんを引きつける魅力があったんだろう。
電源を入れると、昔少年時代に心をときめかされたロボットの起動シーンを
彷彿とさせるようなグラフィックが画面に表示された。
ボタンを押せば何かが発進するんじゃないかと思わせる様な、
計算し尽くされた順序でLEDが華麗に点灯した。
そう、これさえあれば気分はロボットのコックピットだ。
装置の機能は競合他社の製品と決定的に異なるところは何ひとつない。
そんな状況にもかかわらず、お客さんの仕事をする手を止めさせ、
周囲に人を集めさせた『こなた』はある意味かなりすごいのかもしれない、と思った。
みんな面白そうに電源を操作したり、ボタンを触ったりしていた。
大道寺さんが遊びでつけただけの不要な機能が、これほどうけるとは想像もしなかった。

もっとも、必ずしも評判が良かったわけではない。
「もっと安くなりませんか?表示はこんなに派手でなくていいので…」
お客さんがそう言うのはもっともな話だ。
しかし、それでもこなたには人が群がっていた。

「こなた…ですか。良い名前ですね」
お客さんが大道寺さんに話しかけていた。
「ええ、とても気に入っています」
「ゆたかとかにしなかったんですか?」
その言葉を口にしたのはお客さんの方だった。
何やらオタク臭がただよってくる人だった。
「ほぉ〜…ゆたかたん…良いですね〜…」
「わかりますか??」
「わかりますよ〜!」
等という、俺には何の事だか理解できない話をしていた。
どうせまたアニメの話なんだろう。
「ちなみにこなたの後継機種はかがみなんですよ。
そのあとつかさ、みゆきと続くんですよ。
是非シリーズで購入して全キャラコンプリートしてくださいね」
大道寺さんはちゃっかり売り込みまでしていた。
「ところで、次はどのアニメが来そうですかね?」
なんて話で先輩とお客さんが盛り上がっていた。
橋本課長とお客さんの担当者がまじめな話をしているすぐ隣で。
「ところで、次はどんな技術がきそうですか?」
とまじめな話をしているすぐ隣で。

「それにしてもここのノブ、操作しにくいですよね?ちょっと細すぎませんか?」
大道寺さんの話にも、橋本課長の話にもついていけず、
一人でぼうっとしていた俺にお客さんが注文をつけてきた。
「ここはちょうどいいノブが見付からなくてとりあえずこれを付けています。
製品版では改良します」
と俺が答えた。
そんなところに大道寺さんが割り込んできた。
さっきまでアニメ談義で盛り上がっていたお客さんと一緒に。
「いっそのことここのノブは特注で作ってしまおうかと思ってるんですけどね。
どんな形がいいですか?」
と大道寺さんが言った。
「こなたと言う名前にふさわしい物がいいですね」
とオタクさん。元い、オキャクさん
「ほほぉ、やはりそう思われますか?
私もそう思いましてね、実は今北海堂さんに
ノブを彫っていただけないかと打診しているところなんですよ〜」
「北海堂さんですか!?あの高い造形技術を持っていることで有名な!?
それはそれは贅沢な作りですね〜」
とオタクさんは満足げに笑みを浮かべた。
北海堂といえばフィギュアを作っているメーカーではないか。
食玩のおまけで一躍有名になり、
一般人にまでその名が知れ渡った有名企業だ。
そんなところにノブを作らせるなど、俺も初耳だぞ!!
って言うか、たかがノブ一つにどれほど金をかけるつもりなんだこいつらは!?
「しかし、そうなるともったいなくて触れませんな」
とオタクさん。
「いえいえ、ついつい触りたくなってしまうデザインにしますから。
普段使い用、観賞用、予備、シークレットの四種類を用意しますから」
大道寺さんとオタクさんがムフフと不気味な笑みを浮かべた。
「あの…、普通のノブでいいですから」
こそっと俺に耳打ちしたのは、最初俺に話しかけてきたお客さんだった。
よかった。世の中まともな人もいたらしい。

それにしても、あのオタクさんが課長とは…
俺はひょっとして出世街道から外れているのか?

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