出張にDS持ってくるんじゃねぇ!バカヤロォ!!
展示会に行ってきた。
様々な企業が自社の最新技術や製品をアピールするための催しだ。
この手のイベントは大抵都会である。
俺たちが行った展示会は東京国際展示場であった。
こなたの開発も一段落して少しばかり時間に余裕ができた。
だから息抜きをかねて最近のトレンドを掴むという名目で展示会に行った。
展示する側として参加するならば大変かもしれないけれど、見るだけなら話は別だ。
ぶっちゃけた話、遊びに行ったと言っても過言ではない。
もちろん、会社の金でだ。
行ったのは俺と大道寺さん、それからほぼ引率係の渡辺さんの三人だ。
俺はまだ見習い中だから先輩の大道寺さんについて行くのは当然なのだろう。
だから本来は大道寺さんが引率係になって然るべきなのだ。
それなのにどうして引率係が必要なのかというとだ。
「だって僕電車嫌いだし、乗り方よくわからないんだよ」
なんて事を大道寺さんが言うものだから、
やむを得ず営業の渡辺さんが駆り出された。
とは言っても、東京に遊びにいけるのだから渡辺さんもまんざらではない様子だった。
「じゃあ明日は8時50分に駅の改札に集合ね。遅れたらダメだよ、大道寺くん?」
と渡辺さんは念を押していた。
しかし、それでも遅刻をしてくるのが大道寺さんだ。
ただ、いつもと違って大道寺さんは走ってきた。
息を切らせながら駅の階段を駆け登ってきたんだ。
それから「ごめんなさい」と謝った。
俺じゃなくって渡辺さんに…。
俺は少しばかり驚いた。いつも無敵すぎる大道寺さんが謝ったんだから。
「大道寺くん、遅刻したらダメだっていつも言ってるでしょ??」
そんな事課長も部長も言えないのに、渡辺さんは言った。
そして大道寺さんを謝らせた。実は渡辺さんってすごい人なのかもしれない。
「ひょっとして電車に乗り遅れちゃいましたか…??」
と大道寺さんが申し訳なさそうに言った。
「大丈夫、こんなこともあろうかと思って大道寺くんには集合時間を早めに言ったから」
つまり渡辺さんには大道寺さんが遅刻することは想定通りの事態だったということだ。
まぁあれだけしょっちゅう遅刻する人なんだから想定できない方にも問題がありそうだ。
それにしても大道寺さんが本当に電車の切符さえまともに買えないとは思いもしなかった。
まるで初めてのお使いに行かされた子供のようにおどおどとしていた。
家に引き篭ってばかりだからわからないんだよ!
まぁしかしこんなときのための引率係なのだろう。
渡辺さんが大道寺さんの切符までちゃんと買っていた。
「こっちだよ、大道寺くんちゃんと着いてきてる?」
なんて、指定席で買った新幹線の座席に座らせるまで
渡辺さんはしっかりと引率していた。
座席につくと大道寺さんは鞄の中から早速DSを取り出してゲームを始めた。
俺はその光景に驚いた!そして呆れた…。
だって出張なんだよ?一応仕事なんだよ??
確かに俺たちの仕事は新幹線の中じゃ何もできない。
目の前にパソコンとか基板とかオシロスコープとか半田鏝が揃っていないと仕事にならない。
でもだからっていきなりDSかよ!?まるで子供の遠足じゃないか!
いや、子供だって遠足にDSは持ってこないだろう?
「先生!大道寺くんがDS持ってきてます!!」
って感じだ。
しかし、引率係の渡辺さんは雑誌なんか広げて寛いでいて、
大道寺さんを指導するつもりなんてさらさらないようだった。
「お菓子は1000円以内だよ?」
することがないから俺は持ってきたお菓子を頬張っていた。
そんな俺に向かって大道寺さんが言ったんだ。
「えっ!?そんなの決まってるんですか??」
「そうだよ。就業規則の出張のところに書いてあったでしょ??」
「えっっ!?マジですか??」
そんなことまで規定されているのか!?と驚いてしまった。
まぁしかし大道寺さんが出世するくらいおかしな会社なんだから、
そんなことまで規定していたとしても不思議ではないような気がした。
けれど大道寺さんはしばしの沈黙の後に言った。
「馬鹿じゃん?そんなの嘘に決まってるでしょ?」
下らないこと言いやがって!!
「えっと…国際展示場はどうやっていくのかな?」
東京駅まで引率してきた渡辺さんも、東京にはそれほど詳しいわけではないようだった。
手帳を取り出して調べてきたページをぺらぺらと探していた。
そんな時に大道寺さんがぽつりと言った。
「山手線に乗って大崎でりんかい線に乗り換えたら行けますよ」
「えっ?大道寺さん知ってるんですか?」
新幹線にさえ一人で乗れなかった引き篭りが、
どうして東京の路線に詳しいのかと疑問に思うのは当然だろう?
「オタクの常識だよ?」
「オタクだとどうして知ってるんですか??」
「ビッグサイトはオタクの聖地だよ?年2回、巡礼しているからね」
東京国際展示場が一体いつからオタクの聖地になったのかは甚だ疑問だ。
が、しかし、大道寺さんは的確に答えてくれた。
「1996年の夏からだよ」
俺の疑問はそういうつもりではなかったのだが、
そうきっぱり言い切られると納得するほかない…。
「その時はどうやって東京まで来てるんですか?」
「車だよ?電車嫌いだし。でも東京に入ると慣れない都会の道を走るのも大変だしね。
仕方がないから電車で移動してるんだけどね」
「車って大道寺さんのあの車ですか!?」
車全体にアニメキャラクターの絵が描かれた超絶的に痛いエリーゼの事だ。
「そうだよ、何のための塗装だと思ってるの?聖地巡礼仕様だよ。みんな乗ってるんだよ」
みんな、と言う言葉がどれほどの規模の人を指しているのかはわからない。
とりあえず、大道寺さんみたいな人が少なからず集まってくるということだろう。
しかしそんな痛々しい車が集まったところなどさぞかし壮観であるに違いない。
きっと一般人には近寄る事もできない精神的結界というか、
ATフィールド的なものが展開されていることだろう。
「で、何があるんですか?その聖地で」
「君は本当にものを知らないんだね。コミケだよ、コ・ミ・ケ」
だってさ、知らないでしょ?普通はさ。コミックマーケットだなんてさ。
まぁでも大道寺さんのおかげで迷わず東京国際展示場、通称ビッグサイトに到着できた。
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アンケートです。
面白いと思った方は、下のURLにアクセスしてください。
http://moox.or.tp/cgi-bin/q10/answer.rb?user=moo&no=20&answer=1
様々な企業が自社の最新技術や製品をアピールするための催しだ。
この手のイベントは大抵都会である。
俺たちが行った展示会は東京国際展示場であった。
こなたの開発も一段落して少しばかり時間に余裕ができた。
だから息抜きをかねて最近のトレンドを掴むという名目で展示会に行った。
展示する側として参加するならば大変かもしれないけれど、見るだけなら話は別だ。
ぶっちゃけた話、遊びに行ったと言っても過言ではない。
もちろん、会社の金でだ。
行ったのは俺と大道寺さん、それからほぼ引率係の渡辺さんの三人だ。
俺はまだ見習い中だから先輩の大道寺さんについて行くのは当然なのだろう。
だから本来は大道寺さんが引率係になって然るべきなのだ。
それなのにどうして引率係が必要なのかというとだ。
「だって僕電車嫌いだし、乗り方よくわからないんだよ」
なんて事を大道寺さんが言うものだから、
やむを得ず営業の渡辺さんが駆り出された。
とは言っても、東京に遊びにいけるのだから渡辺さんもまんざらではない様子だった。
「じゃあ明日は8時50分に駅の改札に集合ね。遅れたらダメだよ、大道寺くん?」
と渡辺さんは念を押していた。
しかし、それでも遅刻をしてくるのが大道寺さんだ。
ただ、いつもと違って大道寺さんは走ってきた。
息を切らせながら駅の階段を駆け登ってきたんだ。
それから「ごめんなさい」と謝った。
俺じゃなくって渡辺さんに…。
俺は少しばかり驚いた。いつも無敵すぎる大道寺さんが謝ったんだから。
「大道寺くん、遅刻したらダメだっていつも言ってるでしょ??」
そんな事課長も部長も言えないのに、渡辺さんは言った。
そして大道寺さんを謝らせた。実は渡辺さんってすごい人なのかもしれない。
「ひょっとして電車に乗り遅れちゃいましたか…??」
と大道寺さんが申し訳なさそうに言った。
「大丈夫、こんなこともあろうかと思って大道寺くんには集合時間を早めに言ったから」
つまり渡辺さんには大道寺さんが遅刻することは想定通りの事態だったということだ。
まぁあれだけしょっちゅう遅刻する人なんだから想定できない方にも問題がありそうだ。
それにしても大道寺さんが本当に電車の切符さえまともに買えないとは思いもしなかった。
まるで初めてのお使いに行かされた子供のようにおどおどとしていた。
家に引き篭ってばかりだからわからないんだよ!
まぁしかしこんなときのための引率係なのだろう。
渡辺さんが大道寺さんの切符までちゃんと買っていた。
「こっちだよ、大道寺くんちゃんと着いてきてる?」
なんて、指定席で買った新幹線の座席に座らせるまで
渡辺さんはしっかりと引率していた。
座席につくと大道寺さんは鞄の中から早速DSを取り出してゲームを始めた。
俺はその光景に驚いた!そして呆れた…。
だって出張なんだよ?一応仕事なんだよ??
確かに俺たちの仕事は新幹線の中じゃ何もできない。
目の前にパソコンとか基板とかオシロスコープとか半田鏝が揃っていないと仕事にならない。
でもだからっていきなりDSかよ!?まるで子供の遠足じゃないか!
いや、子供だって遠足にDSは持ってこないだろう?
「先生!大道寺くんがDS持ってきてます!!」
って感じだ。
しかし、引率係の渡辺さんは雑誌なんか広げて寛いでいて、
大道寺さんを指導するつもりなんてさらさらないようだった。
「お菓子は1000円以内だよ?」
することがないから俺は持ってきたお菓子を頬張っていた。
そんな俺に向かって大道寺さんが言ったんだ。
「えっ!?そんなの決まってるんですか??」
「そうだよ。就業規則の出張のところに書いてあったでしょ??」
「えっっ!?マジですか??」
そんなことまで規定されているのか!?と驚いてしまった。
まぁしかし大道寺さんが出世するくらいおかしな会社なんだから、
そんなことまで規定していたとしても不思議ではないような気がした。
けれど大道寺さんはしばしの沈黙の後に言った。
「馬鹿じゃん?そんなの嘘に決まってるでしょ?」
下らないこと言いやがって!!
「えっと…国際展示場はどうやっていくのかな?」
東京駅まで引率してきた渡辺さんも、東京にはそれほど詳しいわけではないようだった。
手帳を取り出して調べてきたページをぺらぺらと探していた。
そんな時に大道寺さんがぽつりと言った。
「山手線に乗って大崎でりんかい線に乗り換えたら行けますよ」
「えっ?大道寺さん知ってるんですか?」
新幹線にさえ一人で乗れなかった引き篭りが、
どうして東京の路線に詳しいのかと疑問に思うのは当然だろう?
「オタクの常識だよ?」
「オタクだとどうして知ってるんですか??」
「ビッグサイトはオタクの聖地だよ?年2回、巡礼しているからね」
東京国際展示場が一体いつからオタクの聖地になったのかは甚だ疑問だ。
が、しかし、大道寺さんは的確に答えてくれた。
「1996年の夏からだよ」
俺の疑問はそういうつもりではなかったのだが、
そうきっぱり言い切られると納得するほかない…。
「その時はどうやって東京まで来てるんですか?」
「車だよ?電車嫌いだし。でも東京に入ると慣れない都会の道を走るのも大変だしね。
仕方がないから電車で移動してるんだけどね」
「車って大道寺さんのあの車ですか!?」
車全体にアニメキャラクターの絵が描かれた超絶的に痛いエリーゼの事だ。
「そうだよ、何のための塗装だと思ってるの?聖地巡礼仕様だよ。みんな乗ってるんだよ」
みんな、と言う言葉がどれほどの規模の人を指しているのかはわからない。
とりあえず、大道寺さんみたいな人が少なからず集まってくるということだろう。
しかしそんな痛々しい車が集まったところなどさぞかし壮観であるに違いない。
きっと一般人には近寄る事もできない精神的結界というか、
ATフィールド的なものが展開されていることだろう。
「で、何があるんですか?その聖地で」
「君は本当にものを知らないんだね。コミケだよ、コ・ミ・ケ」
だってさ、知らないでしょ?普通はさ。コミックマーケットだなんてさ。
まぁでも大道寺さんのおかげで迷わず東京国際展示場、通称ビッグサイトに到着できた。
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