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ココロたんの手作り料理

今回のお話も、
ブログ妖精ココロたんの二次創作。
第三話です。
私がしばらく前から気に入って使っている、
ブログパーツのココロたん。
詳しく知りたい人は、公式サイトを見てね。
ちなみに、登場人物には、
私が他に書いているオリジナルのお話の
キャラクターも出てくるんだよ。
だからそっちのお話も見てもらえると嬉しい。
まぁ、とりあえず、
何かの役に立つようなものではないと思うけれど…。

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「大道寺さん、起きてください!!」
沢村君は大道寺氏の部屋のチャイムを鳴らし、ドアを叩き、電話を鳴らして
必死で氏を起こそうとしていた。
案の定氏は寝坊していた。いつもの事だ。
日に日に遅刻への罪悪感が薄れ、今では日に日に出勤時間が遅くなっている有様だ。
転勤後初出社の今日もまたいつものように遅刻するつもりなのだろうか。
そんな氏を沢村君は起こそうと頑張っていた。
どうやら氏が遅刻すると沢村君も連体責任で遅刻にされてしまうらしい。
転勤前に上司にそう告げられたようだ。

ドアの前で格闘すること10分、当然中からドアが開けられた。
と言うよりも勝手に開いたのだ。
少なくとも沢村君にはそう見えた。
眠い目をこすりながらお気に入りのパジャマで
ドアを開けたココロたんの姿が沢村君には見えないのだから。
「入りますよ〜?」
と言いながら沢村君は中に入った。
まだ辺りに段ボールが積み上げられたままで、
パソコンだけが辛うじて開放された部屋に驚いている暇はない。
会社が用意した家具などは沢村君の部屋と同じように配置されていたから、
氏がどの部屋で寝ているのかすぐにわかった。
そしていまだに眠りつづけている氏の名前を呼んだ。
「目覚めの悪い朝だよ、全く。男に起こされるとはなんて最悪な朝なんだ…。
って言うか、なんで勝手に入り込んでるの?」
氏の目覚めの第一声がそれだった。
「おはようございます、大道寺さん」
と一足先に目覚めていたココロたんが言った。
「おはよう、ココロたん」
氏は満面の笑みを浮かべ、とたんにご機嫌になった。
「どうしたんですか、大道寺さん?寝ぼけてる場合じゃないですよ!遅刻しますよ!!」
「遅刻くらいでがたがた騒いでるようじゃ出世しないよ?
人を待たせるくらいの器じゃなきゃね」
氏の口癖だ。
「朝ご飯は何がいいかな?」
「俺は食べてきましたよ。って言うか、今はそんな場合じゃないですよ?」
「何言ってるの?君じゃないよ!ココロたんに聞いたの」
「はうっ…!ちゃんとお料理をする約束だったのに…朝ご飯作るの忘れちゃいました…。
うう……お弁当も忘れていました…。
大道寺さんがココロを早く寝かせてくれないから、ココロ寝坊しちゃったんですよ!」
「ごめんね」
と氏は謝った。
「僕はこれから会社行かなきゃいけないんだけど、ココロたん一人で大丈夫?」
「はいっ!ココロ頑張ります!………でも、早く帰ってきてくださいね」
「じゃあ残業しないで帰ってくるからね」
そして氏は一万円をココロたんに握らせた。
「これでお昼ご飯とかお菓子とか好きなの買っていいよ」
などと気前のいいことを言っていた。
「メロンソーダも買っていいですか?」
「良いよ」
「じゃあココロ、お夕飯を作って待ってます。だから絶対に早く帰ってきてくださいね!」

氏は約束通り残業をしないで帰ってきた。
と言うよりも沢村君が目を離した隙に、
就業のチャイムが時を告げる前に会社を抜け出してきたのだが。
ドアを開ける前から氏は異変を感じていた。
異臭がするのだ。その匂いはマンションに近づくにつれ、
そして自室に近づくにつれて強くなっていった。
ドアを開けると、一瞬気が遠くなる程の強烈な空気が鼻を襲った。
心なしか肌までぴりぴりと刺激を感じてしまう程だ。
「お帰りなさい。もう少しでご飯ができるから待っていてくださいね」
エプロン姿のココロたんが台所に立って何らかの化学兵器を製造しているように見えた。
何を作っているのか覗き込もうと背後から氏が近づいた。
「まだ見ちゃダメです!もうすぐだから楽しみに待っていてください!」
しかたなく氏は覗き込むのを諦めた。
ふと足元に視線を落とすと、何故か絞り出されて空になった歯磨き粉のチューブが落ちていた。
どういうわけか底が解けてなくなっていた鍋が落ちていた。
氏は身の危険を感じずにはいられなかった。
と、同時にいつかの胡散臭い占い師だか祈祷師だか陰陽師だか知れない輩の
言っていた言葉を思い出した。
『僕に怪しい影が迫っているとか言っていたな…』
氏の目にはココロたんの後ろ姿が映った。
『このままだと死ぬとか言っていたような気がするが…』
氏はなんとかして助かる方法はないものかと辺りを見回した。
しかしメロンソーダが入っていたと思しき1.5Lのペットボトルが5本くらい転がっているくらいだ。
それは昼間ココロたんが買いに行ったメロンソーダだ。
一度では運びきれないほど買ってしまったから、店と家を3度も往復したくらいだ。
そして残りのメロンソーダが冷蔵庫の90%を占めている。

氏はもうろうとする意識を辛うじて保ちながらテーブルについてその時を待っていた。
「うう……失敗しちゃいました…」
そんな事言われずとも、ココロたん以外の者はみんなとうに知っていた。
氏の前に差し出された物体はもはや口にすることが可能なものには見えなかった。
むしろ得体の知れない地球外物質というべきだろうか。
ぐつぐつと何かが煮えたぎる音と、しゅ〜という何かが解けているかの様な音と、
視界を遮る白煙が土色の焼物の様な物体から立ちのぼっていた。
「鼻をつまんだら食べられます…」
ココロたんはそう言っていた。妖精とは相当に嗅覚が効かないのだろうか。
氏はあまりの劇臭で思考が止まりかけていた。
そもそもこれを見て食べ物だと連想できる人間はいない。
そしてなかなか料理に手を付けようとしない氏を見てココロたんは悲しげな表情を浮かべた。
「ココロが大道寺さんの事を想って作ったお料理なのに…食べてくれないんですか?」
その言葉が氏を突き動かしてしまったのだろう。
「なに、料理は失敗しちゃうくらいの女の子の方が萌えるんだよ…。
それをおいしく平らげるのが男の優しさだろう?
こんな劇萌えな手料理を食わずして何がオタクか!?」
そして氏は勢い良くスプーンを突っ込み、目を閉じると口に運んだ。
ぐずぐずしているとスプーンまで解けてしまうからだ、なんて事を氏は知らない。
口に入れた刹那、本能がそれを激しく拒絶した。
けれども氏はとっさに両手で口を覆った。
今ここで吐き出すようなことがあればココロたんを悲しませる事になるかもしれない、
その一念だけが氏の体を支配していた。
けれどもそれが精一杯だった。飲み込むことなど到底不可能だ。
いかにココロたんを誤魔化し、傷つけないようにこの新兵器を処分するか、
氏はこの状況でありながらもまだそんなことを考えていた。
『まずい…このままでは…汚物と一緒に…魂的なものまで吐き出しそうだ…!』
今、氏は一歩ずつ確実に遠い世界への階段を登っている。
「…おいしいですか?」
こんな状況でありながらもココロたんは不安げな表情で氏をじっと見つめ、
間の抜けた質問をしている。
だから氏は身動きをとることができなかった。
『なんとか…なんとか…ココロたんを傷つけないように…誤魔化さねば…』
そんな氏にもようやく苦しみから開放されるときが訪れた。
氏の意識は次第に遠のき、そして苦悩から自由になれたのだ。

続く

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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