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萌えキャラがマスコットな会社なんて嫌だ!!
マスコットキャラクター。
そんなものを家の会社でも作ろうじゃないかと、
低迷する業績を憂いだあさはかなお偉いさん方が、安直な対策を打ち出した。
更にまずいことに、経費削減と称してプロのデザイナーに依頼せず、
社内から募ることにしたようだ。
数百人も従業員がいるなら、誰か一人くらいまともなアイデアを出すだろうと、
期待したんだろう。
金一封と称して十万円ほど払っておけば、
プロに依頼するよりも安上がりだとでも思ったのだろうか。
自社のマスコットなんだから自分達で考え用などと宣っていたが、
まぁそこまではわからなくもない。
マスコットキャラクターと言うからには、
人や動物や植物などの企業や商品のイメージを具現化した何かでなければならない。
つまり、そこから連想されることは、絵が描けなければいけないということだ。
幼稚園児の落書きのようなラフスケッチを持っていっても、
プロが手直しをしてくれるわけでもなく、
間違ってそのまま採用されるようなことがあれば末代までの恥となりかねない。
マスコットキャラクターごときで業績が改善すると考えておきながら、
その経費さえも削減しているような連中の考えることだから、
見るに耐えない絵でも採用しかねない不安は全社員が抱いていたことだろう。
要するに、これに応募するのには、そのまま採用されて長く衆目にさらされる事にも
耐えられるだけの絵心が要求されることになる。
さて、そんな絵の描ける度胸のある人物が家の会社にどれほどいるだろうか。
きっと少ないだろうな、と思ったのは俺だけではないはずだ。
しかし、一人だけそれができる確かな心当たりがある。
俺の目の前の席で、仕事もしないでずっと絵を描きつづけている人物だ。
もちろん大道寺さんに他ならない。
大道寺さんの場合、十万という端金よりも、もっと別な野望を抱いている気がする。
確かに大道寺さんの絵が上手いことは明らかだ。
何に必要なのかは俺には到底理解できないのだが、
高価な各種のお絵書き用機材にソフトまでが揃っている。
幸い使いこなしているようだから、無駄にはならないんだろう。
そして、おそらくそれらの資産が初めて真っ当な会社の業務のために
使用される機会が訪れたのではないかと俺は思う。
しかしだ。それらの資産を活用して描き出される絵は、
到底家の会社のマスコットキャラクターには相応しくないもの達だと思うのは、
俺だけではないはずだ。
まるで同人誌という名の無検閲の、無限の夢と希望と欲望の詰まった本からとびたしてきたのかと
錯覚するような少女たちを描くのだ。
幸いにして服はきていたようだが…。
一見すると小さなお子様にも優しい絵に見えるのだが、
その少女たちの放つただならぬオーラは明らかに大きなお友達に向けられている。
そういうものを生み出す企業であるならば、それも悪くはないだろう。
しかし、家の会社はそんなものとは全く無縁だ。
とは言ってもだ、大道寺さんの絵と比べられてしまうと、
他の社員が応募した数点の絵など霞んでしまうほど上手く描かれているのは事実だ。
きっと大道寺さんが本を売り出せば徹夜をしてでも買い求める人が列をなすに違いない。
となれば、出す結論は一つしかないはずだと皆思っていたことだろう。
社内公募は失敗だった、と。
いくら上手く描けていても、企業のイメージにそぐわず、
かつ公衆の目に触れさせることさえ憚られるような絵を採用するなど、
ありえないじゃないか?普通さ。
しかし、あろうことか一部のおめでたい連中が大道寺さんの絵を採用しちまいやがったんだ!
何も知らない連中は、皆口をそろえてこう言いやがるんだ。
「可愛い絵じゃない」
ふむ…。
まぁそれも間違いではないのだ…。
ロリっとしてぷにっとした感じのまだ年端もいかぬ少女の絵だ。
確かに可愛くあどけない笑顔を浮かべているのだが…
その裏に隠された、絵描き手の薄汚れた汚らわしい欲望など、知る由もないのだろう。
こうして、無能な連中がマスコットキャラクターを決めちまいやがったんだ!
これでは業績が不審になるのも道理だ。
と、俺はついこの間まで思っていた。
ところが、マスコットキャラクターを発表して以来、
家の製品の問い合わせが増えているというから驚いた。
どうせ偶然に決まっているさ!俺はそう思いたかった。
「この世に偶然はない、あるのは必然だけだよ」
大道寺さんがそう言った。
「いやぁ、すごいよ!
マスコットをみてとりあえず問い合わせをしてみたってお客さんが増えてるんだよ!」
橋本営業課長がうれしそうに言っていた。
「ところで、あの絵にはどういう意味があるんですか?」
俺は大道寺さんに直接尋ねてみた。
「家の会社はまだ出来て十数年くらいでしょ。
これからお客様好みの会社に成長していきますよ〜っていう意味だよ」
大道寺さんはそう言った。
「で、どうして幼い少女じゃないといけなかったんですか??」
もう少し世間一般がイメージするようなマスコットキャラクター像に
近づけた方がよかったのではないかと思うんだ。
「だから、十歳くらいの少女なんだよ。
それにね、千年も昔の平安の世からロリは日本の文化であり、美学だとされてきたでしょ?」
成人男性が十歳くらいの少女を家に連れ帰り、自分好みの将来の嫁とすべく、
英才教育を施すという慣わしは、日本の代表的な文学にも描かれているでしょ!?」
そんな慣わしがあったとは初耳だ!
現代日本でそんなことをした雅な日本人は、
皆マスコミにおもしろおかしく取り上げられ変質者扱いされていることを、
大道寺さんは知らないのだろうか?
「僕は耳と目を閉じた人間になろうと考えた」
大道寺さんは、俺の疑問にそう返してくれた。
迷惑な!周りはお構い無しに口だけは開きっぱなしということか!?
自分に都合の悪いことからは目を反らし、耳を塞ぐということか!!
その自己主張の過ぎる口こそ塞いでもらいたいものだ。
そうすればあなたも天才ハッカーになれますよ。
そんなものを家の会社でも作ろうじゃないかと、
低迷する業績を憂いだあさはかなお偉いさん方が、安直な対策を打ち出した。
更にまずいことに、経費削減と称してプロのデザイナーに依頼せず、
社内から募ることにしたようだ。
数百人も従業員がいるなら、誰か一人くらいまともなアイデアを出すだろうと、
期待したんだろう。
金一封と称して十万円ほど払っておけば、
プロに依頼するよりも安上がりだとでも思ったのだろうか。
自社のマスコットなんだから自分達で考え用などと宣っていたが、
まぁそこまではわからなくもない。
マスコットキャラクターと言うからには、
人や動物や植物などの企業や商品のイメージを具現化した何かでなければならない。
つまり、そこから連想されることは、絵が描けなければいけないということだ。
幼稚園児の落書きのようなラフスケッチを持っていっても、
プロが手直しをしてくれるわけでもなく、
間違ってそのまま採用されるようなことがあれば末代までの恥となりかねない。
マスコットキャラクターごときで業績が改善すると考えておきながら、
その経費さえも削減しているような連中の考えることだから、
見るに耐えない絵でも採用しかねない不安は全社員が抱いていたことだろう。
要するに、これに応募するのには、そのまま採用されて長く衆目にさらされる事にも
耐えられるだけの絵心が要求されることになる。
さて、そんな絵の描ける度胸のある人物が家の会社にどれほどいるだろうか。
きっと少ないだろうな、と思ったのは俺だけではないはずだ。
しかし、一人だけそれができる確かな心当たりがある。
俺の目の前の席で、仕事もしないでずっと絵を描きつづけている人物だ。
もちろん大道寺さんに他ならない。
大道寺さんの場合、十万という端金よりも、もっと別な野望を抱いている気がする。
確かに大道寺さんの絵が上手いことは明らかだ。
何に必要なのかは俺には到底理解できないのだが、
高価な各種のお絵書き用機材にソフトまでが揃っている。
幸い使いこなしているようだから、無駄にはならないんだろう。
そして、おそらくそれらの資産が初めて真っ当な会社の業務のために
使用される機会が訪れたのではないかと俺は思う。
しかしだ。それらの資産を活用して描き出される絵は、
到底家の会社のマスコットキャラクターには相応しくないもの達だと思うのは、
俺だけではないはずだ。
まるで同人誌という名の無検閲の、無限の夢と希望と欲望の詰まった本からとびたしてきたのかと
錯覚するような少女たちを描くのだ。
幸いにして服はきていたようだが…。
一見すると小さなお子様にも優しい絵に見えるのだが、
その少女たちの放つただならぬオーラは明らかに大きなお友達に向けられている。
そういうものを生み出す企業であるならば、それも悪くはないだろう。
しかし、家の会社はそんなものとは全く無縁だ。
とは言ってもだ、大道寺さんの絵と比べられてしまうと、
他の社員が応募した数点の絵など霞んでしまうほど上手く描かれているのは事実だ。
きっと大道寺さんが本を売り出せば徹夜をしてでも買い求める人が列をなすに違いない。
となれば、出す結論は一つしかないはずだと皆思っていたことだろう。
社内公募は失敗だった、と。
いくら上手く描けていても、企業のイメージにそぐわず、
かつ公衆の目に触れさせることさえ憚られるような絵を採用するなど、
ありえないじゃないか?普通さ。
しかし、あろうことか一部のおめでたい連中が大道寺さんの絵を採用しちまいやがったんだ!
何も知らない連中は、皆口をそろえてこう言いやがるんだ。
「可愛い絵じゃない」
ふむ…。
まぁそれも間違いではないのだ…。
ロリっとしてぷにっとした感じのまだ年端もいかぬ少女の絵だ。
確かに可愛くあどけない笑顔を浮かべているのだが…
その裏に隠された、絵描き手の薄汚れた汚らわしい欲望など、知る由もないのだろう。
こうして、無能な連中がマスコットキャラクターを決めちまいやがったんだ!
これでは業績が不審になるのも道理だ。
と、俺はついこの間まで思っていた。
ところが、マスコットキャラクターを発表して以来、
家の製品の問い合わせが増えているというから驚いた。
どうせ偶然に決まっているさ!俺はそう思いたかった。
「この世に偶然はない、あるのは必然だけだよ」
大道寺さんがそう言った。
「いやぁ、すごいよ!
マスコットをみてとりあえず問い合わせをしてみたってお客さんが増えてるんだよ!」
橋本営業課長がうれしそうに言っていた。
「ところで、あの絵にはどういう意味があるんですか?」
俺は大道寺さんに直接尋ねてみた。
「家の会社はまだ出来て十数年くらいでしょ。
これからお客様好みの会社に成長していきますよ〜っていう意味だよ」
大道寺さんはそう言った。
「で、どうして幼い少女じゃないといけなかったんですか??」
もう少し世間一般がイメージするようなマスコットキャラクター像に
近づけた方がよかったのではないかと思うんだ。
「だから、十歳くらいの少女なんだよ。
それにね、千年も昔の平安の世からロリは日本の文化であり、美学だとされてきたでしょ?」
成人男性が十歳くらいの少女を家に連れ帰り、自分好みの将来の嫁とすべく、
英才教育を施すという慣わしは、日本の代表的な文学にも描かれているでしょ!?」
そんな慣わしがあったとは初耳だ!
現代日本でそんなことをした雅な日本人は、
皆マスコミにおもしろおかしく取り上げられ変質者扱いされていることを、
大道寺さんは知らないのだろうか?
「僕は耳と目を閉じた人間になろうと考えた」
大道寺さんは、俺の疑問にそう返してくれた。
迷惑な!周りはお構い無しに口だけは開きっぱなしということか!?
自分に都合の悪いことからは目を反らし、耳を塞ぐということか!!
その自己主張の過ぎる口こそ塞いでもらいたいものだ。
そうすればあなたも天才ハッカーになれますよ。
あなたのおうちに住んでも……いいですか?
今回のお話も、
ブログ妖精ココロたんの二次創作。
第二話です。
私がしばらく前から気に入って使っている、
ブログパーツのココロたん。
詳しく知りたい人は、公式サイトを見てね。
ちなみに、登場人物には、
私が他に書いているオリジナルのお話の
キャラクターも出てくるんだよ。
だからそっちのお話も見てもらえると嬉しい。
まぁ、とりあえず、
何かの役に立つようなものではないと思うけれど…。
-----------------------------------------
あなたのおうちに住んでも……いいですか?
大道寺氏は困り果てていた。
ブログの妖精と称する電波な少女を家まで連れ帰ることになってしまったからだ。
お巡りさんに助けを求めたのにスルーされた。
困っている少女を氏が自宅にお持ち帰りすることを黙認したということなのだろうか。
氏は一つだけどうしても確かめておきたいことがあった。
それは本当にココロたんの姿がお巡りさんには見えなかったのだろうか、ということだ。
氏は自分の部屋に入る前に、隣の部屋へと向かった。
氏の後輩の沢村君が住んでいる部屋だ。
「どうしたんですか、大道寺さん?」
チャイムを鳴らすとほどなく沢村君が姿を表した。
「一人?」
氏は尋ねた。
「今は俺一人ですよ。まだここに知合いもいませんし、引越しの片付けもしないといけないので」
「いや、そうじゃなくって、今尋ねてきてるのは僕一人だけかな?」
沢村君は氏の質問の意図が全く理解できないようだった。
当然といえば当然なのだが。
「…どういう意味ですか??大道寺さんだけじゃないですか??」
「この辺に女の子の姿が見えたりしない?」
氏はココロたんの両肩に手をそえ、沢村くんに見せるように自分の前へと導いた。
「…すみません、生憎俺には二次元の少女を見る能力がないのですが…」
「じゃあ見えないの!??」
「大道寺さん以外の姿は見えませんが…何かあったんですか??
部屋に少女の幽霊でも出ましたか??」
始め、沢村くんはいつもの戯言だろうと思って聞いていたようだが、
氏がいつもより深刻な面持ちであることに気づいた。
「環境が変わって疲れてるんじゃないですか?早く寝た方がいいですよ」
と少しばかり心配しているようだった。
氏は諦めてココロたんを自室に入れた。
さてこれはどうしたものかと考えた。
なぜココロたんの姿が他の人には見えていないのか。
ひょっとしてココロたんは本当に妖精なのだろうかと信じはじめていた。
だとするならば、心の澄んだ人間にしか見えない妖精なのだろうか、と。
ではなぜ氏のところにココロたんが現れたのか?
それはきっと日頃の善行の数々に神様が遣わしてくださった御褒美に相違ない、と理解した。
「ココロは、ブログ妖精学校に通う、ブログ妖精のたまごです。
お料理とかお掃除とか頑張ります!だから、あの……あなたのおうちに住んでも……いいですか?」
氏はう〜んと考えた。家に帰りたいと言っていた子がなぜ家に住むと言い出しているのか。
まぁどうやったら帰れるのかなんてわからないのだから、
それまでの間ということなら構わないだろう。
もちろんそれが100年後くらいになって、
三次元の物体を圧縮して通信回路上を転送する技術が確立されない限り不可能な事だとしても、
それでも一向に構わないはずだ。
このまま外に放り出すなど大人として許されない。
困っている少女を手厚く保護するのが大人の義務だからだ。
そもそも神様が遣わして下さった御褒美を突き返すなどという罰当たりな事が許されるはずもない。
そしてこのままつまらないことを考えつづけても埓が明かない。
氏は決断した。
「いいよ」
「よかった…。ココロ安心したらお腹が空いちゃいました」
と言うものだから遅い夕飯を食べることになった。
引っ越してきたばかりでまだ片付いてもいない氏の部屋に食べ物などあるはずもなかった。
氏は自慢の愛車で買い出しに行くことにした。
「ココロも着いていっていいですか?」
ということで一緒に。
氏の車を見てココロたんは驚いた。
「すごいです〜!ココロこんなの初めて見ました!!」
大きな目をより大きく見開いて感嘆の声をあげた。
それは車という文明の利器を初めて見たからなのか、
あるいは氏の愛車のような特殊な外装の車を見るのが初めてだからなのだろうか。
「車を見たことないの??」
「ブログの写真とか動画でなら見たことはあります。でも実物を見るのは初めてです!
ブログ妖精界には車がないんですよ」
「そっか。まぁ1Tbpsで走れるなら車なんて必要ないよね」
「ココロ、ドキドキです!」
氏が助手席のドアを開けると、ココロたんははしゃぎながら乗り込んだ。
当然ながら氏の愛車には学堂用チャイルドシートなどあるはずもないのだが、
きっと道路交通法は妖精には適用されないだろう。
「ココロ、子供じゃありません!大道寺さんよりもお姉さんなんですよ!!」
やはり氏の車はこの町でも目立っていた。
道ゆく人全ての視線が氏の車に釘付けになってしまう程だ。
氏の車は再びなのはカラーに変わっていた。今度はエクセリオン仕様なのだそうだ。
不心得な車に対してディバインバスター・エクステンションを放つことができるらしい。
「ココロあそこがいいです!」
と指さしたのは黄色いM字の看板がくるくると回っているファーストフード店だった。
「ココロたんは何が食べたい?」
「大道寺さんと同じのがいいです。あと、メロンソーダが飲みたいです!!」
「ご注文は1セットでよろしいですか?」
とマイクから店員さんの声が尋ねた。
「2セットずつ下さい」
「メロンソーダはLサイズを5つ下さい!!」
ココロたんは氏の膝の上に覆いかぶさるように身を乗り出し、マイクに向かって叫んだ。
姿は見えないのにココロたんの心の叫びは聞こえたらしい。
「5つですか?」
と店員さんの声が繰り返した。
「はい、じゃあ5つ下さい」
注文した商品を手渡してくれる店員のお姉さんは声も出ないほどに驚いた表情をしていた。
一人で食すには少しばかり注文数が多いというところにも少しくらい疑問を抱いていたことだろう。
特にメロンソーダの消費量が。
しかしそれ以上に初めて見る極めて特異な車に驚いていたようだ。
もっとも、氏がこの町に住み続けるうちに見慣れたものとなることだろう。
続く
ブログ妖精ココロたんの二次創作。
第二話です。
私がしばらく前から気に入って使っている、
ブログパーツのココロたん。
詳しく知りたい人は、公式サイトを見てね。
ちなみに、登場人物には、
私が他に書いているオリジナルのお話の
キャラクターも出てくるんだよ。
だからそっちのお話も見てもらえると嬉しい。
まぁ、とりあえず、
何かの役に立つようなものではないと思うけれど…。
-----------------------------------------
あなたのおうちに住んでも……いいですか?
大道寺氏は困り果てていた。
ブログの妖精と称する電波な少女を家まで連れ帰ることになってしまったからだ。
お巡りさんに助けを求めたのにスルーされた。
困っている少女を氏が自宅にお持ち帰りすることを黙認したということなのだろうか。
氏は一つだけどうしても確かめておきたいことがあった。
それは本当にココロたんの姿がお巡りさんには見えなかったのだろうか、ということだ。
氏は自分の部屋に入る前に、隣の部屋へと向かった。
氏の後輩の沢村君が住んでいる部屋だ。
「どうしたんですか、大道寺さん?」
チャイムを鳴らすとほどなく沢村君が姿を表した。
「一人?」
氏は尋ねた。
「今は俺一人ですよ。まだここに知合いもいませんし、引越しの片付けもしないといけないので」
「いや、そうじゃなくって、今尋ねてきてるのは僕一人だけかな?」
沢村君は氏の質問の意図が全く理解できないようだった。
当然といえば当然なのだが。
「…どういう意味ですか??大道寺さんだけじゃないですか??」
「この辺に女の子の姿が見えたりしない?」
氏はココロたんの両肩に手をそえ、沢村くんに見せるように自分の前へと導いた。
「…すみません、生憎俺には二次元の少女を見る能力がないのですが…」
「じゃあ見えないの!??」
「大道寺さん以外の姿は見えませんが…何かあったんですか??
部屋に少女の幽霊でも出ましたか??」
始め、沢村くんはいつもの戯言だろうと思って聞いていたようだが、
氏がいつもより深刻な面持ちであることに気づいた。
「環境が変わって疲れてるんじゃないですか?早く寝た方がいいですよ」
と少しばかり心配しているようだった。
氏は諦めてココロたんを自室に入れた。
さてこれはどうしたものかと考えた。
なぜココロたんの姿が他の人には見えていないのか。
ひょっとしてココロたんは本当に妖精なのだろうかと信じはじめていた。
だとするならば、心の澄んだ人間にしか見えない妖精なのだろうか、と。
ではなぜ氏のところにココロたんが現れたのか?
それはきっと日頃の善行の数々に神様が遣わしてくださった御褒美に相違ない、と理解した。
「ココロは、ブログ妖精学校に通う、ブログ妖精のたまごです。
お料理とかお掃除とか頑張ります!だから、あの……あなたのおうちに住んでも……いいですか?」
氏はう〜んと考えた。家に帰りたいと言っていた子がなぜ家に住むと言い出しているのか。
まぁどうやったら帰れるのかなんてわからないのだから、
それまでの間ということなら構わないだろう。
もちろんそれが100年後くらいになって、
三次元の物体を圧縮して通信回路上を転送する技術が確立されない限り不可能な事だとしても、
それでも一向に構わないはずだ。
このまま外に放り出すなど大人として許されない。
困っている少女を手厚く保護するのが大人の義務だからだ。
そもそも神様が遣わして下さった御褒美を突き返すなどという罰当たりな事が許されるはずもない。
そしてこのままつまらないことを考えつづけても埓が明かない。
氏は決断した。
「いいよ」
「よかった…。ココロ安心したらお腹が空いちゃいました」
と言うものだから遅い夕飯を食べることになった。
引っ越してきたばかりでまだ片付いてもいない氏の部屋に食べ物などあるはずもなかった。
氏は自慢の愛車で買い出しに行くことにした。
「ココロも着いていっていいですか?」
ということで一緒に。
氏の車を見てココロたんは驚いた。
「すごいです〜!ココロこんなの初めて見ました!!」
大きな目をより大きく見開いて感嘆の声をあげた。
それは車という文明の利器を初めて見たからなのか、
あるいは氏の愛車のような特殊な外装の車を見るのが初めてだからなのだろうか。
「車を見たことないの??」
「ブログの写真とか動画でなら見たことはあります。でも実物を見るのは初めてです!
ブログ妖精界には車がないんですよ」
「そっか。まぁ1Tbpsで走れるなら車なんて必要ないよね」
「ココロ、ドキドキです!」
氏が助手席のドアを開けると、ココロたんははしゃぎながら乗り込んだ。
当然ながら氏の愛車には学堂用チャイルドシートなどあるはずもないのだが、
きっと道路交通法は妖精には適用されないだろう。
「ココロ、子供じゃありません!大道寺さんよりもお姉さんなんですよ!!」
やはり氏の車はこの町でも目立っていた。
道ゆく人全ての視線が氏の車に釘付けになってしまう程だ。
氏の車は再びなのはカラーに変わっていた。今度はエクセリオン仕様なのだそうだ。
不心得な車に対してディバインバスター・エクステンションを放つことができるらしい。
「ココロあそこがいいです!」
と指さしたのは黄色いM字の看板がくるくると回っているファーストフード店だった。
「ココロたんは何が食べたい?」
「大道寺さんと同じのがいいです。あと、メロンソーダが飲みたいです!!」
「ご注文は1セットでよろしいですか?」
とマイクから店員さんの声が尋ねた。
「2セットずつ下さい」
「メロンソーダはLサイズを5つ下さい!!」
ココロたんは氏の膝の上に覆いかぶさるように身を乗り出し、マイクに向かって叫んだ。
姿は見えないのにココロたんの心の叫びは聞こえたらしい。
「5つですか?」
と店員さんの声が繰り返した。
「はい、じゃあ5つ下さい」
注文した商品を手渡してくれる店員のお姉さんは声も出ないほどに驚いた表情をしていた。
一人で食すには少しばかり注文数が多いというところにも少しくらい疑問を抱いていたことだろう。
特にメロンソーダの消費量が。
しかしそれ以上に初めて見る極めて特異な車に驚いていたようだ。
もっとも、氏がこの町に住み続けるうちに見慣れたものとなることだろう。
続く
これは所謂二次創作ってやつさ
今回のお話は、
ブログ妖精ココロたんの二次創作。
私がしばらく前から気に入って使っている、
ブログパーツのココロたん。
詳しく知りたい人は、公式サイトを見てね。
ちなみに、登場人物には、
私が他に書いているオリジナルのお話の
キャラクターも出てくるんだよ。
だからそっちのお話も見てもらえると嬉しい。
まぁ、とりあえず、
何かの役に立つようなものではないと思うけれど…。
-----------------------------------------
人工萌妖精ココロ
「怪しい影が迫っているぞ!払ってやるから寄っていけ!
…おい、そこの若いの!お前の事だ!!このまま放っておくと死ぬぞ〜!!」
早速わけのわからない輩に声をかけられるとは変なところに来てしまったものだ。
それは大道寺氏が引っ越してきた日の夜に町を散策していたときの出来事だった。
大道寺氏がこれから初めての一人暮しをする町だ。
悪いことというものは続くらしい。
氏が携帯ストラップを指にかけてくるくると回していたら飛んでいってしまった。
橋の下めがけて勢い良く。
幸いにしてポチャンという絶望的な音は聞こえなかった。
欄干から身を乗り出して覗き込んで見ると干上がった川岸のくさむらに落ちたらしいことがわかった。
しかし慌てて広いに行ってもすぐには見付からなかった。
百メートル程の幅がある川のうちほんの数メートルくらいにしか水は流れていない。
残る数十メートルは膝くらいまで伸びた草が大いしげっている。
この中のどこかに落ちたんだろう。けれども夜の暗闇の中から見つけるのは絶望的だ。
灯りといえば橋の上をときどき通る車のヘッドライトくらいのものだ。
氏はあきらめて堤防の斜面に腰を降ろした。
着信でもあれば派手なイルミネーションとメロディでその居場所を教えてくれるだろうと期待して。
「あの……助けてもらえませんか?」
背後から幼い声がした。
振り向くとまるでどこかのコスプレ会場から出てきたような、異様な服装をした少女が立っていた。
レースクイーンのように肩と足を必要以上に露出している。
上半身のボディラインがわかるほど体にフィットしたスーツと、
パンツが見えそうなほど膨らんだスカートだ。仮に履いていたとすればの話だが。
必要以上に大きな帽子まで全てオレンジ色に青いストライプの入った目立つ色をしている。
年の頃は10代になりたてといったところだろうか。
そんな子がこんな時間に人気のない川辺を歩いていたら、
危険な事の一つや二つ襲ってきても不思議はない。
しかし、困っている少女に手を差し伸べるのが大人というものだ。そうだろう?
「どうしたの?」
「お家に帰れなくなってしまったんです…」
「迷子??家どこ?…って聞いても僕もこの辺の地理は良く知らないけれど…」
「ブログ妖精界です…」
一瞬、氏は我が耳を疑った。
「…どこだって?」
「ブログ妖精界です!」
「そっか〜、遠くから来たんだね〜…」
などと言ってはみたものの、氏は困ってしまった。
せっかく絵に描いたような可愛い少女が助けを求めているのだから助けてあげたいところなのだが、
妖精界とかいうファンタチックなところに足を踏み入れることが許される年齢ではない。
だからと言って、このままこの少女を見捨てることなど氏にできるはずもなかった。
「それってどの辺にあるのかな?って言うか、そこからどうやってきたの?」
「わかりません…。むーちゃんとどっちが速く走れるかって競争してただけなんです。
ココロが1Tbpsくらいで走ってたら何かにつまずいちゃって…。
こけて起き上がったらあそこにいたんです…」
そう言ってココロたんはくさむらを指さした。
氏はますます困った。
電車できたとか、車できたとか、そういう答えを期待していたはずなのだが…。
さらに困ったことに、ココロたんは真剣で今にも涙が溢れ出しそうな瞳で氏を見つめている。
「よし…、じゃあ警察に行こう」
氏は自力で解決することをあきらめた。
「えっ!?…ココロ何も悪いことしてないですよ…」
ココロたんは不安そうに言った。
「大丈夫だよ、お巡りさんも小さな女の子には優しいからね。
大丈夫!なんとかなるよ。絶対に大丈夫だよ!
大きな力で助けてくれるよ!そのために税金払ってるんだからね?」
そして氏は立ち上がった。
「あっ、携帯探すんだった…」
「携帯なくしたんですか?よければココロが鳴らしますよ?」
「そうしてくれる?と言っても電話番号は覚えてないんだけど…
メールアドレスでもいいかな?」
「はい。ではどうぞ!」
「全世界ネコミミメイド化計画@ドコモのなんとかかんとか…」
なかなかに珍しいメールアドレスを聞いても、
ココロたんは驚きもせずに携帯をぽちぽちと操作した。
ほどなくミクの歌声が静かな川辺に響いた。
そして光輝く氏の携帯は無事発見された。
「ココロ子供じゃありませんっ!」
氏が子供扱いをしたからご機嫌を損ねたのだろう。
「ココロたんは何歳?」
「1万11才です」
「それは…ブログ妖精歴で数えるのかな?」
「はい。でも西暦で数えてもきっとあなたよりも年上ですよ」
仮にその話を信じるとするならば、ブログ妖精というのは人間よりも発育に時間がかかるのだろうか。
一説に依るとブログ妖精の1万11才は人間の11才に相当するらしい。
もっとも、仮説であるから信じる信じないは自由だ。
そんな話をしながら氏とココロたんは真っ暗な堤防沿いの道を歩いていた。
そこにタイミング良くパトカーが通りかかった。
親切にも氏が呼び止めようとするよりも先に止まってくれた。
それは氏がお巡りさんを引き止めるようなオーラを放っていたからかもしれない。
「こんなところで何してるの?」
そう言いながら二人のお巡りさんが降りてきた。
「この子が迷子になったみたいだから警察に届けようと思っていたんだけど」
「この子?どの子?兄ちゃん一人だろ?」
「一人??僕の隣に女の子がいるでしょ?」
「隣!?」
お巡りさんは二人揃って氏の左右を持っていた懐中電灯で照らして姿を探してみたようだ。
「誰もいないじゃないか。兄ちゃん飲みすぎたんじゃないのか?送ってやるから乗りなさい」
二人の警察官はよくいる酔っ払いとして処理する気のようだ。
変質者に拐かされそうになっている少女の存在を、
見て見ぬふりをしようなどと企んでいるようには思えなかった。
氏はさらに困惑した。
隣を見れば氏の胸くらいの高さの少女が確かに不安げな表情を浮かべて立っているのだが。
氏はパトカーの後部座席に乗せられた。
「ちょっと待って!」
外から警察官がドアを閉めようとするのを氏は制止した。
「もう一人いるから!」
「はいはい」
警察官は呆れた様子ながらもドアを大きく開いてくれた。
その隙にココロたんは氏の隣に乗り込んだ。
「兄ちゃん、もういいか?閉めるぞ」
この警官には本当に姿が見えていないのだろうか。
結局最後まで氏はただの酔っ払いとして扱われた。
氏がマンションのドアロックを開錠したところを見届けると警察官は帰っていった。
氏とココロたんは顔を見合わせ、困惑するしかなかった。
続く
ブログ妖精ココロたんの二次創作。
私がしばらく前から気に入って使っている、
ブログパーツのココロたん。
詳しく知りたい人は、公式サイトを見てね。
ちなみに、登場人物には、
私が他に書いているオリジナルのお話の
キャラクターも出てくるんだよ。
だからそっちのお話も見てもらえると嬉しい。
まぁ、とりあえず、
何かの役に立つようなものではないと思うけれど…。
-----------------------------------------
人工萌妖精ココロ
「怪しい影が迫っているぞ!払ってやるから寄っていけ!
…おい、そこの若いの!お前の事だ!!このまま放っておくと死ぬぞ〜!!」
早速わけのわからない輩に声をかけられるとは変なところに来てしまったものだ。
それは大道寺氏が引っ越してきた日の夜に町を散策していたときの出来事だった。
大道寺氏がこれから初めての一人暮しをする町だ。
悪いことというものは続くらしい。
氏が携帯ストラップを指にかけてくるくると回していたら飛んでいってしまった。
橋の下めがけて勢い良く。
幸いにしてポチャンという絶望的な音は聞こえなかった。
欄干から身を乗り出して覗き込んで見ると干上がった川岸のくさむらに落ちたらしいことがわかった。
しかし慌てて広いに行ってもすぐには見付からなかった。
百メートル程の幅がある川のうちほんの数メートルくらいにしか水は流れていない。
残る数十メートルは膝くらいまで伸びた草が大いしげっている。
この中のどこかに落ちたんだろう。けれども夜の暗闇の中から見つけるのは絶望的だ。
灯りといえば橋の上をときどき通る車のヘッドライトくらいのものだ。
氏はあきらめて堤防の斜面に腰を降ろした。
着信でもあれば派手なイルミネーションとメロディでその居場所を教えてくれるだろうと期待して。
「あの……助けてもらえませんか?」
背後から幼い声がした。
振り向くとまるでどこかのコスプレ会場から出てきたような、異様な服装をした少女が立っていた。
レースクイーンのように肩と足を必要以上に露出している。
上半身のボディラインがわかるほど体にフィットしたスーツと、
パンツが見えそうなほど膨らんだスカートだ。仮に履いていたとすればの話だが。
必要以上に大きな帽子まで全てオレンジ色に青いストライプの入った目立つ色をしている。
年の頃は10代になりたてといったところだろうか。
そんな子がこんな時間に人気のない川辺を歩いていたら、
危険な事の一つや二つ襲ってきても不思議はない。
しかし、困っている少女に手を差し伸べるのが大人というものだ。そうだろう?
「どうしたの?」
「お家に帰れなくなってしまったんです…」
「迷子??家どこ?…って聞いても僕もこの辺の地理は良く知らないけれど…」
「ブログ妖精界です…」
一瞬、氏は我が耳を疑った。
「…どこだって?」
「ブログ妖精界です!」
「そっか〜、遠くから来たんだね〜…」
などと言ってはみたものの、氏は困ってしまった。
せっかく絵に描いたような可愛い少女が助けを求めているのだから助けてあげたいところなのだが、
妖精界とかいうファンタチックなところに足を踏み入れることが許される年齢ではない。
だからと言って、このままこの少女を見捨てることなど氏にできるはずもなかった。
「それってどの辺にあるのかな?って言うか、そこからどうやってきたの?」
「わかりません…。むーちゃんとどっちが速く走れるかって競争してただけなんです。
ココロが1Tbpsくらいで走ってたら何かにつまずいちゃって…。
こけて起き上がったらあそこにいたんです…」
そう言ってココロたんはくさむらを指さした。
氏はますます困った。
電車できたとか、車できたとか、そういう答えを期待していたはずなのだが…。
さらに困ったことに、ココロたんは真剣で今にも涙が溢れ出しそうな瞳で氏を見つめている。
「よし…、じゃあ警察に行こう」
氏は自力で解決することをあきらめた。
「えっ!?…ココロ何も悪いことしてないですよ…」
ココロたんは不安そうに言った。
「大丈夫だよ、お巡りさんも小さな女の子には優しいからね。
大丈夫!なんとかなるよ。絶対に大丈夫だよ!
大きな力で助けてくれるよ!そのために税金払ってるんだからね?」
そして氏は立ち上がった。
「あっ、携帯探すんだった…」
「携帯なくしたんですか?よければココロが鳴らしますよ?」
「そうしてくれる?と言っても電話番号は覚えてないんだけど…
メールアドレスでもいいかな?」
「はい。ではどうぞ!」
「全世界ネコミミメイド化計画@ドコモのなんとかかんとか…」
なかなかに珍しいメールアドレスを聞いても、
ココロたんは驚きもせずに携帯をぽちぽちと操作した。
ほどなくミクの歌声が静かな川辺に響いた。
そして光輝く氏の携帯は無事発見された。
「ココロ子供じゃありませんっ!」
氏が子供扱いをしたからご機嫌を損ねたのだろう。
「ココロたんは何歳?」
「1万11才です」
「それは…ブログ妖精歴で数えるのかな?」
「はい。でも西暦で数えてもきっとあなたよりも年上ですよ」
仮にその話を信じるとするならば、ブログ妖精というのは人間よりも発育に時間がかかるのだろうか。
一説に依るとブログ妖精の1万11才は人間の11才に相当するらしい。
もっとも、仮説であるから信じる信じないは自由だ。
そんな話をしながら氏とココロたんは真っ暗な堤防沿いの道を歩いていた。
そこにタイミング良くパトカーが通りかかった。
親切にも氏が呼び止めようとするよりも先に止まってくれた。
それは氏がお巡りさんを引き止めるようなオーラを放っていたからかもしれない。
「こんなところで何してるの?」
そう言いながら二人のお巡りさんが降りてきた。
「この子が迷子になったみたいだから警察に届けようと思っていたんだけど」
「この子?どの子?兄ちゃん一人だろ?」
「一人??僕の隣に女の子がいるでしょ?」
「隣!?」
お巡りさんは二人揃って氏の左右を持っていた懐中電灯で照らして姿を探してみたようだ。
「誰もいないじゃないか。兄ちゃん飲みすぎたんじゃないのか?送ってやるから乗りなさい」
二人の警察官はよくいる酔っ払いとして処理する気のようだ。
変質者に拐かされそうになっている少女の存在を、
見て見ぬふりをしようなどと企んでいるようには思えなかった。
氏はさらに困惑した。
隣を見れば氏の胸くらいの高さの少女が確かに不安げな表情を浮かべて立っているのだが。
氏はパトカーの後部座席に乗せられた。
「ちょっと待って!」
外から警察官がドアを閉めようとするのを氏は制止した。
「もう一人いるから!」
「はいはい」
警察官は呆れた様子ながらもドアを大きく開いてくれた。
その隙にココロたんは氏の隣に乗り込んだ。
「兄ちゃん、もういいか?閉めるぞ」
この警官には本当に姿が見えていないのだろうか。
結局最後まで氏はただの酔っ払いとして扱われた。
氏がマンションのドアロックを開錠したところを見届けると警察官は帰っていった。
氏とココロたんは顔を見合わせ、困惑するしかなかった。
続く
わがままな女の子が好きだ!と言う奴こそわがままだ!!
「あぁ…。見るからに無能そうな顔してますよね」
そんなことを面と向かって言うやつがいただろうか?
俺はいまだかつてそんなやつを見たことがない、
とほんの数秒前までなら言っていたことだろう。
でも今はもう違う。今さっきそいつは俺に向かって言いやがった!
そいつは美奈という名の大道寺さんの妹だ!!
彼女の怖れを知らない無敵さは正しく大道寺さんの妹の証であるとも言える。
高校一年生の、まだ15才の、俺よりも10才も年下のガキの分際で、
俺に面と向かってそう言い放ちやがった!!
その言葉は俺の中で何度も反芻され、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。
いつの間にか俺が手にしていたコーヒーカップが
カタカタと音をたてながら震え、コーヒーが波打っていた。
俺は全身にみなぎる爆発しそうな力を必死で抑え込んでいた。
大人は無闇にキレることが許されないんのだよ。
そんな俺を見て、クスッと小生意気に笑いやがった!
「子供の私にそんなこと言われて怒っちゃうなんて、器の小さな人なんですね〜?
それとも、図星だったりしましたか〜?」
とうれしそうにぬかしやがった!!
腹の底から殺意のようなものが沸き上がってくる気がした。
大人の恐さを思い知らせてやる!!と、言いたいところなのだが、
俺にはそれが許されない…。
恐い恐い世間の目と、危ないお兄ちゃんに守られた少女に手を上げることなど許されるはずがない。
もしもあのにくたらしいほどきれいな顔に傷でもつけようものなら…
俺の人生はそこで終わりを迎えることになるだろう。
間違いなく俺は即日無職確定だ。大道寺さんには人事権などなさそうな気がするのだが、
俺を首にするくらいの力は隠しもっていそうな気がする。
もっとも、それはその場で逆上した大道寺さんに切り刻まれずに、
生き長らえることができればの話だが。
そして更に恐ろしいモノがある。
専業主婦という名の工作員、通称オバサンだ。
特に情報の収集と操作に関して比類を見ない能力を持っており、
CIAやSISといった世界の名立たる情報機関も一目をおく日本の民間諜報員だ。
パートタイムのオバサンたちから構成される特務機関
Nippon no Eekagenna uwasa wo RuFu surutameno団、
通称NERFの存在は公然の秘密だ。
ちなみに非政府組織とされ、日本政府は一切の関与を否定している。
彼女たちの手にかかれば、
商店からトイレットペーパーを消し去ることも、
金融機関をつぶし経済を傾かせる事も、
生意気な小娘アイドルを闇に葬りさることさえ不可能ではない。
オタクが秋葉原外に侵攻できないでいるのもひとえに彼女たちの工作活動の賜だ。
中でも、団地のオバちゃんと呼ばれる精鋭中の精鋭たちは、
独身OLのスリーサイズから彼氏の数、帰宅時間、近所の家庭のごみ袋の中身、
近所のガキの通知表の数字、果ては宇宙の真理までもを把握している、
人知を越えた存在だ。
今、俺の座っている席の回りはそのオバサン達に囲まれている。
あどけない少女の顔に痣をつける野蛮な男を目撃した彼女たちのとる行動は想像に硬くない。
俺はおろか俺の家族までも日本で生活できなくさせられてしまうことは火を見るよりも明らかだ。
だから俺はぐっと我慢するしかなかったんだ。
きっと大道寺さんが甘やかしているからこんな生意気になりやがるんだ!
世間の厳しさを知らないガキめ!
世間をなめていたら社会に出てから苦労するぞ!!
と言ってやりたいところだけれど、きっと輝く程の学歴を経るであろうこの小娘は、
さほど苦労もしやがらないんだろうなぁ…。
正に絵に描いたような美少女、そう形容しうるほど可愛いわけだから、
数年もすれば、黙ってさえいれば道行く人が振りむくほどにきれいになりやがるんだろう。
きれいな女は苦労などしなくても、涼しい顔をして人生の荒波を乗り越えていけるというのは
もはや常識といっても過言ではないだろう?
馬鹿な男共のせいでさ。
あぁ、そう思うとこの小生意気な顔が一段と憎く思えてくる。
結局、俺は気分が悪いまま店を出ることになった。
大道寺さんが奢ってくれるなどと言い出したが、丁重にお断りしておいた。
一応会社では先輩だが、一歩外に出れば俺の方が年上なわけだ。
おまけにそんなことを妹の目の前でさせたらお兄ちゃんの株が上がってしまうじゃないか。
だから俺は自分で払うことにした。
それにしても、実に惜しい。そして日本の未来は暗い。
頭の良い、将来も有望な娘であるにもかかわらず、すっかりオタクの毒に冒されている。
きっと末は官僚か大臣に違いない!
きっとあの子は将来日本を中枢から蝕むことになるだろう!
同性同士の、特に男同士の婚姻制度が認められるような事になれば、
この国は腐り始めたといっていいだろう。
その折にはお兄ちゃんが日本百合の花愛好会とかいう団体を作って政治的圧力をかけるに違いない。
女性同士の婚姻制度が認められるようなことがあれば、そうなったのだと思うことにしよう。
しかし、無能呼ばわりされたことは俺にも責任の一端がないわけではないだけに、
余計に腹が立つ。
この間、休日にデート中に大道寺さんを呼び出してしまった事だ。
俺の手に負えなかったからそうしてしまったわけなのだが…
その時に大道寺さんがすっぽかしたデートの相手が、
他ならぬ美奈ちゃんだったわけだ。
若くて可愛いというだけの生意気でわがままな小娘だ!
しかし、大道寺さんはそんなわがままに振り回されるのも、
まんざら嫌そうではないのだから救いようがない。
だが俺は思うのだ。わがままな女の子が好きだと言っている人種こそ
真にわがままであるに違いない!と。
肉体的、経済的に痛くない程度のわがままが好きだよ〜、と口を揃えてのたまうその人種こそ。
ちなにみ、痛いことにさえ喜びを感じてしまう人種は、
マゾヒストであると認識すべきだろう。
そんなことを面と向かって言うやつがいただろうか?
俺はいまだかつてそんなやつを見たことがない、
とほんの数秒前までなら言っていたことだろう。
でも今はもう違う。今さっきそいつは俺に向かって言いやがった!
そいつは美奈という名の大道寺さんの妹だ!!
彼女の怖れを知らない無敵さは正しく大道寺さんの妹の証であるとも言える。
高校一年生の、まだ15才の、俺よりも10才も年下のガキの分際で、
俺に面と向かってそう言い放ちやがった!!
その言葉は俺の中で何度も反芻され、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。
いつの間にか俺が手にしていたコーヒーカップが
カタカタと音をたてながら震え、コーヒーが波打っていた。
俺は全身にみなぎる爆発しそうな力を必死で抑え込んでいた。
大人は無闇にキレることが許されないんのだよ。
そんな俺を見て、クスッと小生意気に笑いやがった!
「子供の私にそんなこと言われて怒っちゃうなんて、器の小さな人なんですね〜?
それとも、図星だったりしましたか〜?」
とうれしそうにぬかしやがった!!
腹の底から殺意のようなものが沸き上がってくる気がした。
大人の恐さを思い知らせてやる!!と、言いたいところなのだが、
俺にはそれが許されない…。
恐い恐い世間の目と、危ないお兄ちゃんに守られた少女に手を上げることなど許されるはずがない。
もしもあのにくたらしいほどきれいな顔に傷でもつけようものなら…
俺の人生はそこで終わりを迎えることになるだろう。
間違いなく俺は即日無職確定だ。大道寺さんには人事権などなさそうな気がするのだが、
俺を首にするくらいの力は隠しもっていそうな気がする。
もっとも、それはその場で逆上した大道寺さんに切り刻まれずに、
生き長らえることができればの話だが。
そして更に恐ろしいモノがある。
専業主婦という名の工作員、通称オバサンだ。
特に情報の収集と操作に関して比類を見ない能力を持っており、
CIAやSISといった世界の名立たる情報機関も一目をおく日本の民間諜報員だ。
パートタイムのオバサンたちから構成される特務機関
Nippon no Eekagenna uwasa wo RuFu surutameno団、
通称NERFの存在は公然の秘密だ。
ちなみに非政府組織とされ、日本政府は一切の関与を否定している。
彼女たちの手にかかれば、
商店からトイレットペーパーを消し去ることも、
金融機関をつぶし経済を傾かせる事も、
生意気な小娘アイドルを闇に葬りさることさえ不可能ではない。
オタクが秋葉原外に侵攻できないでいるのもひとえに彼女たちの工作活動の賜だ。
中でも、団地のオバちゃんと呼ばれる精鋭中の精鋭たちは、
独身OLのスリーサイズから彼氏の数、帰宅時間、近所の家庭のごみ袋の中身、
近所のガキの通知表の数字、果ては宇宙の真理までもを把握している、
人知を越えた存在だ。
今、俺の座っている席の回りはそのオバサン達に囲まれている。
あどけない少女の顔に痣をつける野蛮な男を目撃した彼女たちのとる行動は想像に硬くない。
俺はおろか俺の家族までも日本で生活できなくさせられてしまうことは火を見るよりも明らかだ。
だから俺はぐっと我慢するしかなかったんだ。
きっと大道寺さんが甘やかしているからこんな生意気になりやがるんだ!
世間の厳しさを知らないガキめ!
世間をなめていたら社会に出てから苦労するぞ!!
と言ってやりたいところだけれど、きっと輝く程の学歴を経るであろうこの小娘は、
さほど苦労もしやがらないんだろうなぁ…。
正に絵に描いたような美少女、そう形容しうるほど可愛いわけだから、
数年もすれば、黙ってさえいれば道行く人が振りむくほどにきれいになりやがるんだろう。
きれいな女は苦労などしなくても、涼しい顔をして人生の荒波を乗り越えていけるというのは
もはや常識といっても過言ではないだろう?
馬鹿な男共のせいでさ。
あぁ、そう思うとこの小生意気な顔が一段と憎く思えてくる。
結局、俺は気分が悪いまま店を出ることになった。
大道寺さんが奢ってくれるなどと言い出したが、丁重にお断りしておいた。
一応会社では先輩だが、一歩外に出れば俺の方が年上なわけだ。
おまけにそんなことを妹の目の前でさせたらお兄ちゃんの株が上がってしまうじゃないか。
だから俺は自分で払うことにした。
それにしても、実に惜しい。そして日本の未来は暗い。
頭の良い、将来も有望な娘であるにもかかわらず、すっかりオタクの毒に冒されている。
きっと末は官僚か大臣に違いない!
きっとあの子は将来日本を中枢から蝕むことになるだろう!
同性同士の、特に男同士の婚姻制度が認められるような事になれば、
この国は腐り始めたといっていいだろう。
その折にはお兄ちゃんが日本百合の花愛好会とかいう団体を作って政治的圧力をかけるに違いない。
女性同士の婚姻制度が認められるようなことがあれば、そうなったのだと思うことにしよう。
しかし、無能呼ばわりされたことは俺にも責任の一端がないわけではないだけに、
余計に腹が立つ。
この間、休日にデート中に大道寺さんを呼び出してしまった事だ。
俺の手に負えなかったからそうしてしまったわけなのだが…
その時に大道寺さんがすっぽかしたデートの相手が、
他ならぬ美奈ちゃんだったわけだ。
若くて可愛いというだけの生意気でわがままな小娘だ!
しかし、大道寺さんはそんなわがままに振り回されるのも、
まんざら嫌そうではないのだから救いようがない。
だが俺は思うのだ。わがままな女の子が好きだと言っている人種こそ
真にわがままであるに違いない!と。
肉体的、経済的に痛くない程度のわがままが好きだよ〜、と口を揃えてのたまうその人種こそ。
ちなにみ、痛いことにさえ喜びを感じてしまう人種は、
マゾヒストであると認識すべきだろう。
コスプレを楽しむ人種は一般人じゃねぇんだよぉぉ!!
偶然エンコー少女とデート中の大道寺さんに遭遇したあの日。
俺は昼食に誘われた。せっかくだから一緒に行くことにした。
それにやっぱり気になるじゃないか。
大道寺さんとエンコー少女の事が。妹だなんて言い張ってるけどさ。
俺はあまりに疑っていたものだから、テーブルに落ち着いたときに言ってみたんだ。
「ねぇ、美奈ちゃん。学生証見せてよ」
と。すると大道寺さんが激怒しちゃったんだよ。
「美奈ちゃんだなんて馴れ馴れしく呼ぶな!汚らわしい!!」
そりゃもう店中が一瞬静まり返ってしまう程の大声だった。
普段は何言ってるんだか聞こえないくらいぼそぼそとしか喋らない人なのにさ。
「す、すみません…」
とりあえず謝るしかなかった。
「はい、どうぞ」
俺が驚いている間に自称妹の美奈ちゃんが学生証を見せてくれた。
「へぇ〜、女子高の学生証なんて初めて見たな〜」
なんて当たり前の事を言いながら記載事項に目を走らせた。
そしたらまぁ驚いたことにそれは確かに頭の良い少女たちが集まる京安女子高校の学生証で、
間違いなく大道寺美奈と名前が記されていた。
「ひょっとして疑っていました?」
美奈ちゃんが言った。
「まぁ無理もないよ。僕も信じられなかったくらいだからね。
家の血筋であんな学校には入れるなんてあり得ないと思っていたから」
と大道寺さん。まぁ俺が疑っていたのはそれだけではないのだが…。
「でも珍しい髪型してるね。姫カットって言うんでしょ?」
美奈ちゃんは自分の髪を弄りながら答えてくれた。
「これは…お兄ちゃんがどうしてもって言うから…」
俺は驚いて大道寺さんの顔を見てしまったよ。
この変態オタクは妹になんて事を強要してやがるんだ!?
「でも、嫌なら自分の好きな髪型にすれば良かったんじゃないの?」
妹を溺愛していると思しき大道寺さんが暴力を振るうとはまず考えられない。
だから無視しても問題ないと思ったんだが…。
「別に嫌ってわけでもないんですよ…。
それにこの髪型にしたらお兄ちゃんが好きな服買ってくれるっていうし…」
乙女の命を金で売り渡してはいけないんだよ!!
俺はこの将来有望な少女を更生させなければと思った。
「でもその髪型にあわせる服って結構限られてくるんじゃないのかな?
ちょっと変わった感じの服とかしか合わないんじゃないの??」
「う〜ん…でも私そういう服も好きですよ」
とまぁまんざらでもないようだ。
「まぁ可愛い子はどんな髪型にしても、どんな服着てても可愛いからね」
俺は半分冗談のつもりで言ったんだ。
それなのに予想外の答えが返ってきたよ!
「やっぱりそう思います?
私可愛いからこの髪型も似合うんじゃないかなって思ってたんですよ」
と嬉しそうに言いやがったんだよ。
俺は驚きのあまりしばらく言葉がでなかったよ。
「自分の事を可愛いって言う子は…初めて見たよ…」
「そうですか?
でも私が自分なんて可愛くないですよ〜って謙遜しても白々しいじゃないですか?
私そんな嘘つけません」
なんと恐れを知らない事を言う娘なのか!?
この無敵さは正しく大道寺さんの妹である証ともいえそうだ。
「高校に受かったら東京に連れていってくれるって約束してたのに、
お兄ちゃん一人で行っちゃうんですよ!!」
と美奈ちゃんがかなり不満そうに言った。
それはきっと大道寺さんがコミケとやらに行った時の事だと思う。
「そういうのは友達とかと行った方が良いんじゃないの?
お兄ちゃんと一緒だったらつまらないんじゃないのかな?」
どうせ大道寺さんの良く所なんて東京のごく一部なんだから。
俺も出張と称して大道寺さんに付いて行ったことがあるからわかる。
まぁ生でオタクの生態を観察できたのは興味深い体験ではあったが、
楽しかったと人に勧められるようなものじゃない。
普通に東京を楽しみたいなら普通の友達と行った方が良いに決まっている、と俺は思う。
「でも友達と行ったらお金出してくれないし…」
と言いながらねだるような瞳で大道寺さんを見つめていた。
「じゃあ、美奈がコスプレするなら連れていってあげるよ?」
と大道寺さん。
それはつまり到底不可能な条件を突きつけて断る魂胆なのだなと俺は思った。
しかし美奈ちゃんは意外な事を言った。
「コスプレって……何の?」
「もちろん知世さまでしょ?」
「う〜ん……。お兄ちゃんと一緒だったら良いよ?」
「えっ!?僕もやるの?え〜と…じゃあ何のキャラが良いかな??
美奈がさくらたんのコスプレするなら僕は迷わず桃矢お兄ちゃんなんだけど…。
美奈のその髪型なら絶対知世様だよね〜…」
「じゃあ私知世姫やるから、お兄ちゃんは黒鋼ね」
俺はこの会話を聞いていて思った。
やっぱりこの二人は間違いなく兄妹なんだなと。
「妹さんもよくアニメを見るの?」
と聞いてみた。
「えっ!?私はお兄ちゃんほどは見てないですよ?ときどき一緒に見てるくらいで…。
変ですか??だってカードキャプターさくらは私が小学生の頃に
NHKの地上波で放送していたアニメですよ、『なかよし』連載の。
だから私が見ていても全然普通だと思うんですけど…。
まぁお兄ちゃんが一緒になって私よりも熱心に見ていたのは…
ちょっと変かもしれないけど…」
「さくらたんが僕の人生を変えたんだよ!」
と大道寺さん。
しかし、美奈ちゃんの言った『地上波』という言葉は心なしかオタク臭い。
なによりもこの兄妹は大切な事に気づいていない。
コスプレを楽しむ人種は一般人じゃねぇんだよぉぉ!!
俺は昼食に誘われた。せっかくだから一緒に行くことにした。
それにやっぱり気になるじゃないか。
大道寺さんとエンコー少女の事が。妹だなんて言い張ってるけどさ。
俺はあまりに疑っていたものだから、テーブルに落ち着いたときに言ってみたんだ。
「ねぇ、美奈ちゃん。学生証見せてよ」
と。すると大道寺さんが激怒しちゃったんだよ。
「美奈ちゃんだなんて馴れ馴れしく呼ぶな!汚らわしい!!」
そりゃもう店中が一瞬静まり返ってしまう程の大声だった。
普段は何言ってるんだか聞こえないくらいぼそぼそとしか喋らない人なのにさ。
「す、すみません…」
とりあえず謝るしかなかった。
「はい、どうぞ」
俺が驚いている間に自称妹の美奈ちゃんが学生証を見せてくれた。
「へぇ〜、女子高の学生証なんて初めて見たな〜」
なんて当たり前の事を言いながら記載事項に目を走らせた。
そしたらまぁ驚いたことにそれは確かに頭の良い少女たちが集まる京安女子高校の学生証で、
間違いなく大道寺美奈と名前が記されていた。
「ひょっとして疑っていました?」
美奈ちゃんが言った。
「まぁ無理もないよ。僕も信じられなかったくらいだからね。
家の血筋であんな学校には入れるなんてあり得ないと思っていたから」
と大道寺さん。まぁ俺が疑っていたのはそれだけではないのだが…。
「でも珍しい髪型してるね。姫カットって言うんでしょ?」
美奈ちゃんは自分の髪を弄りながら答えてくれた。
「これは…お兄ちゃんがどうしてもって言うから…」
俺は驚いて大道寺さんの顔を見てしまったよ。
この変態オタクは妹になんて事を強要してやがるんだ!?
「でも、嫌なら自分の好きな髪型にすれば良かったんじゃないの?」
妹を溺愛していると思しき大道寺さんが暴力を振るうとはまず考えられない。
だから無視しても問題ないと思ったんだが…。
「別に嫌ってわけでもないんですよ…。
それにこの髪型にしたらお兄ちゃんが好きな服買ってくれるっていうし…」
乙女の命を金で売り渡してはいけないんだよ!!
俺はこの将来有望な少女を更生させなければと思った。
「でもその髪型にあわせる服って結構限られてくるんじゃないのかな?
ちょっと変わった感じの服とかしか合わないんじゃないの??」
「う〜ん…でも私そういう服も好きですよ」
とまぁまんざらでもないようだ。
「まぁ可愛い子はどんな髪型にしても、どんな服着てても可愛いからね」
俺は半分冗談のつもりで言ったんだ。
それなのに予想外の答えが返ってきたよ!
「やっぱりそう思います?
私可愛いからこの髪型も似合うんじゃないかなって思ってたんですよ」
と嬉しそうに言いやがったんだよ。
俺は驚きのあまりしばらく言葉がでなかったよ。
「自分の事を可愛いって言う子は…初めて見たよ…」
「そうですか?
でも私が自分なんて可愛くないですよ〜って謙遜しても白々しいじゃないですか?
私そんな嘘つけません」
なんと恐れを知らない事を言う娘なのか!?
この無敵さは正しく大道寺さんの妹である証ともいえそうだ。
「高校に受かったら東京に連れていってくれるって約束してたのに、
お兄ちゃん一人で行っちゃうんですよ!!」
と美奈ちゃんがかなり不満そうに言った。
それはきっと大道寺さんがコミケとやらに行った時の事だと思う。
「そういうのは友達とかと行った方が良いんじゃないの?
お兄ちゃんと一緒だったらつまらないんじゃないのかな?」
どうせ大道寺さんの良く所なんて東京のごく一部なんだから。
俺も出張と称して大道寺さんに付いて行ったことがあるからわかる。
まぁ生でオタクの生態を観察できたのは興味深い体験ではあったが、
楽しかったと人に勧められるようなものじゃない。
普通に東京を楽しみたいなら普通の友達と行った方が良いに決まっている、と俺は思う。
「でも友達と行ったらお金出してくれないし…」
と言いながらねだるような瞳で大道寺さんを見つめていた。
「じゃあ、美奈がコスプレするなら連れていってあげるよ?」
と大道寺さん。
それはつまり到底不可能な条件を突きつけて断る魂胆なのだなと俺は思った。
しかし美奈ちゃんは意外な事を言った。
「コスプレって……何の?」
「もちろん知世さまでしょ?」
「う〜ん……。お兄ちゃんと一緒だったら良いよ?」
「えっ!?僕もやるの?え〜と…じゃあ何のキャラが良いかな??
美奈がさくらたんのコスプレするなら僕は迷わず桃矢お兄ちゃんなんだけど…。
美奈のその髪型なら絶対知世様だよね〜…」
「じゃあ私知世姫やるから、お兄ちゃんは黒鋼ね」
俺はこの会話を聞いていて思った。
やっぱりこの二人は間違いなく兄妹なんだなと。
「妹さんもよくアニメを見るの?」
と聞いてみた。
「えっ!?私はお兄ちゃんほどは見てないですよ?ときどき一緒に見てるくらいで…。
変ですか??だってカードキャプターさくらは私が小学生の頃に
NHKの地上波で放送していたアニメですよ、『なかよし』連載の。
だから私が見ていても全然普通だと思うんですけど…。
まぁお兄ちゃんが一緒になって私よりも熱心に見ていたのは…
ちょっと変かもしれないけど…」
「さくらたんが僕の人生を変えたんだよ!」
と大道寺さん。
しかし、美奈ちゃんの言った『地上波』という言葉は心なしかオタク臭い。
なによりもこの兄妹は大切な事に気づいていない。
コスプレを楽しむ人種は一般人じゃねぇんだよぉぉ!!





